横浜市内の外国籍住民が過去最多の約11万6千人に上る中、サッカーJ2横浜FCが「言葉の壁」の解消に柔らかなパスを入れている。「やさしい日本語」の普及に向け、外国籍選手が登場する啓発動画や18区役所の窓口で使用する「指さしシート」を提供。外国籍選手が活躍するクラブにとっては身近な取り組みで、担当者は「プロスポーツが持つ発信力や影響力を生かし、社会の認知や皆さんの行動へつながるよう活動していきたい」と積極的だ。
「スーパーで買いたい商品が言えずに困った」。ブラジル人DFで主将のガブリエウ(29)が来日当初を振り返れば、同国出身のMFユーリ・ララ(29)も「やさしい日本語で語りかけてもらえると私たちも助かる」と呼びかける。市の公式ユーチューブチャンネルに投稿された動画は生活者ならではの悩みと、手を携える大切さを伝えている。
市では職員向けの研修で難解な行政用語の言い換えなどを促してきた。「全く日本語が分からないという方は少なく、簡単な言葉なら分かるという方が多い」と市政策経営局広報課。昨年は約9千人増と外国籍住民の流入が続く一方、生活のさまざまな場面で相手の母国語が分からずに身構えてしまうケースはいまだ根強い。市民向けの啓発策を模索する中、前に進めたのが横浜FCからの提案だった。
クラブとしても学校訪問などホームタウン事業を通じて問題意識を高めており、“ベトナムのメッシ”の異名を持つFWグエン・コン・フォン(29)の日本語学習も一つのきっかけ。そもそも、ポルトガル語を中心に日常的に多言語が飛び交うサッカー界である。
「彼らに日本を好きになってもらい、力を発揮してもらうためにも僕たちができることはまだまだある」。そう語るのがクラブ・リレーションズ・オフィサーの内田智也さん(40)だ。実に12カ国の監督、選手とプレーした経験があり、現役時代の晩年には香港に渡って自身が外国籍選手としての立場も経験。「スポーツ界は外国籍の選手に対して抵抗はない。しっかりと(取り組みを)見せていくことが、社会につながっていく」と使命感を燃やす。