ほろ苦いデビュー戦となった。横浜DeNAの2021年ドラフト1位右腕、小園健太投手(21)が10日の中日戦でプロ初登板初先発も、3回持たず7安打5失点で降板。三浦監督の背番号18を受け継いだ未来のエース候補は「攻めの投球ができなかった」と悔やむが、新たな一歩を刻んだのは確かだ。では、チームメートや指導者らの目にはどう映ったのか。
初球は146キロの直球。ファンも待ち焦がれた瞬間に、横浜スタジアムは沸いた。「やっぱり大観衆だったし、(2軍と)環境の違いはすごく感じた」と小園。最後はカーブで見逃し三振。最高の滑り出しを見せたはずだった。
だが、22年ドラ1で自身2度目の先発マスクをかぶった松尾が反省を口にする。
「自分もまだまだ経験が足りない。お互いがそういう緊張感を持ちながらのゲームだった」
若いバッテリーが経験不足を露呈した場面は二回だ。無死一塁からの小園のバント処理が遅れて一塁セーフ。ランナーをためてしまい、この回2点を失う。
「足が速いバッターに対して、ワンステップして(送球して)しまった。あそこはノーステップで行くべきだった」と小園。冷静さを欠き、力んで制球が甘くなる。三回のピンチで降板。「自分のリズムで投げられなかった。きょうはメンタルの部分で、気持ちで負けた」
ベンチ最前列で唇をかみしめた。そこへ17年目の伊藤が右腕の横に座り、語りかけた。「相手がいることだから、結果を出したくても出ないときもある。『きょう感じたことをこれからに生かさないといけない』という話をした」。高知・明徳義塾高からプロ入りしたベテラン捕手の脳裏には、ルーキーだった当時の緊張感が色濃く焼き付いている。
「僕も1年目に試合に出たとき、地に足が付かなかったのをいまだに覚えているし、気持ちを忘れていない」。ドラフト3位でオリックスに入団し、1年目の2008年9月に1軍デビューを果たした。「すごく緊張したし、1球の怖さ、負ける怖さを知った」と振り返る。
「小園の場合は周囲の期待値も大きいと思う」と気持ちをくみ取る伊藤。経験豊富なベテランからの言葉は胸に響いたはずだ。