今年に入って飲食店などでノロウイルスによる食中毒発生件数が全国で急増している。神奈川県内は、3月末現在で過去最多の2016年と同水準となっている。年間を通じて発生するため、今後も注意が必要という。県内の保健所は衛生管理の徹底を呼びかけている。
県によると、16年は年間29件発生し、記録が残る2007年以降で最多となっている。17年から23年は2~15件で推移していたが、今年は1月から3月末までに既に17件発生し、16年の同時期と比べて1件増となっている。
増加の原因は明らかになっていないものの、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことに伴う社会経済活動の活発化が背景にあるとみられている。県内自治体の担当者は「コロナ禍で手洗いが徹底されて予防できていたが、最近は反動でおろそかになっている可能性がある」と指摘する。
ノロウイルスは経口感染や飛沫(ひまつ)感染、接触感染などさまざまな感染経路がある。さらにはカキなど二枚貝を除けば、食品からウイルスが検出されず、原因食品が不明のままとなるケースも多く、対策が難しいという。
県の担当者は「とにかく環境をきれいにして、手洗いをよくすることが大切。特に調理従事者は注意してほしい」と話す。
◆ノロウイルス 人の腸の中でのみ増殖し、潜伏期間は1~2日とされる。感染すると下痢や嘔吐(おうと)などの症状が現れることがあるが、症状がない場合もある。ふん便などに含まれて排せつされ、下水処理場で処理しても死滅しない。そのため海に流れ込み、カキなど二枚貝が摂取して体内に蓄積される。こうした二枚貝を十分に加熱せずに食べると食中毒を引き起こす。食品が原因となる経口感染のほか、接触感染、飛沫(ひまつ)感染もある。