水俣病患者・被害者遺族らと伊藤信太郎環境相との懇談で被害者側のマイクが切られて発言が遮られた問題の追及は9日の国会でも続いた。交流サイト(SNS)上も荒れ、岸田文雄首相のスローガンを引く「『聞く力』民のマイクを『切る力』」といった皮肉まじりの川柳も飛び交う。衆院3補選全敗、派閥裏金事件を巡る政治資金規正法の与党改正案づくり難航と苦境続きの政権は「言行不一致」(自民幹部)の果てに自壊の危機に直面している。
マイクの音量カットを巡っては、8日の衆院内閣委員会で立憲民主党の中谷一馬氏(比例南関東)から追及を受けた環境省の事務方が「長時間発言者への対応例として従前より準備していた。今回初めて発動した」と答弁。ハプニング的な対応ではなくマニュアルを整えていたことを認めた。
「最低なオペレーションの非人道的行為」(中谷氏)との批判に林芳正官房長官も「政府としておわび申し上げたい」と謝罪に追い込まれた。「組織としての判断」を認める言質を審議で取られ、環境相の監督責任や首相の任命責任は免れない状態。首相サイドは9日午後に「環境相へは厳重注意を行った」と明らかにしたが、与野党双方で批判は収まる気配はない。