能登半島地震で被災地のデジタル支援に当たった県のCIO(情報統括責任者)兼CDO(データ統括責任者)の江口清貴氏が今月、報道陣の取材に応じた。石川県での支援活動を振り返るとともに、災害に備えた情報データの統合と活用の重要性を語った。
江口氏は1月1日の地震発生直後から情報共有の会議を開くなど、被災地が抱える課題の収集を重ねた。通信インフラが復旧しない状況を受け、KDDIと石川県の協力を得て衛星インターネットサービス「スターリンク」を現地で支援活動に当たる組織に手配した。1台で30~40人程度がインターネットにアクセスでき、設置も簡単という。
江口氏は同7日に現地入り。石川県庁に拠点を構え、同県の関係部局などから被災情報を集めようとしたものの、情報が錯綜(さくそう)し「Aさんに聞くと白と言っていたことが、Bさんに聞いたら黒と言われるような状況だった」と語る。
各所に散らばった情報をデータとして活用できるよう一元化に着手。避難所や孤立集落の位置や身を寄せている人の数などのデータを統合し、場所ごとにIDを割り当てた。行政や災害派遣医療チーム(DMAT)など各組織によって差異があった情報を統一し、より正確な状況を共有できるシステムを構築した。
避難者には交通系ICカードのSuica(スイカ)を配布。IDを割り振り、避難所に設置した機器で読み取ることで、出入りや物資の受け取りなどの履歴を把握できるようにした。
通信アプリLINE(ライン)を活用し、被災者が行政に要望を伝えられる仕組みも作った。新型コロナウイルス禍に神奈川県で運用した「新型コロナ対策パーソナルサポート」の発想が基盤になっている。
災害時のデジタル活用を推進した形だが、今回の成果を「0.1%ぐらい。やるべきことがほとんどできなかった」と振り返る。災害対応として最低限のベースとなる部分は構築できたが、さらに先へ進めるためには、現地の行政がデジタル活用を理解してくれるよう平時からの関係構築などが必要と実感したという。