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盗撮「やめたくても繰り返してしまう」 横浜の30代男性 病気と診断、更生への道険しく

カナロコ by 神奈川新聞 2024年6月9日 11時50分

 学習塾の講師が教え子を盗撮するなど、盗撮被害が後を絶たない。警察庁によると、2022年の盗撮関連の検挙件数は5737件で、18年以降の5年間で最多となった。性犯罪の中でも盗撮は再犯率が高いとされ、背景に「依存症」の存在が指摘されるケースもある。  

 「やめたくても、繰り返してしまう。自分一人ではどうにもできなかった」。何度も盗撮行為などで逮捕され、現在は「性嗜好(しこう)障害」の治療を受けている横浜市の30代男性は、自らが犯した罪の重さをかみしめつつ、悔恨の思いと、更生に向けた険しい道のりを語った。

 「カッ、カッ、カッ」

 地面を鳴らすハイヒールの音が近づいてくる。

 「来た、今だ」。個室トイレで待ち伏せていた男性は洋式便器に登り、上から隣のスペースをのぞいた。そして女性の姿を確認するとすかさずスマートフォンを取り出して起動させ、女性の姿をカメラに収めた。「単なる好奇心からスタートした愚行」と自嘲気味に話す男性。しかし、気付いたときにはもうそこから抜け出せなくなっていた。

 きっかけはアダルトビデオ(AV)だった。トイレにいる女性の盗撮映像に興奮を覚え、数カ月たってもその映像が自然と頭に浮かんできた。「自分にもできそう。やってみようかな」。人通りが少なく、女性用個室トイレを設置している駅で降車し、個室に忍び込んで女性を待ち伏せた。

 初めは撮影に失敗することもあったが、思い描いた通りの映像が撮れた高揚感は何物にも代え難かった。幼少期、カードゲームのコレクションに没頭したように、街をふらついてスマホ片手に好みの女性を物色するようになっていた。

 スポーツトレーナーを目指し、19歳で1人暮らしを始めてから少しずつ歯車が狂い始めたと感じている。友人と毎晩のようにネオン街に繰り出し、気付けば授業中は居眠りばかりしていた。卒業が近づき、友人たちがスポーツジムで下働きなどを始める姿を横目に、自らはコンビニエンスストアでアルバイトする道を選んでいた。

 最初は鬱憤(うっぷん)を晴らすのが目的だった。夜間、高校に忍び込んで女子生徒の制服やユニホームを次々と盗んだ。「無我夢中で衣服をかき集めることで、バイトのストレスを忘れられた」

 27歳から始めた盗撮行為もそれに近い感覚で、30代後半になるまでやめることができなかった。これまで建造物侵入や迷惑防止条例違反などの容疑で、計5回も逮捕されている。

 「今回でやめよう。家族や友人を裏切ることになる」。紹介された心療内科のクリニックにも通ったが、往復に2時間かけることが面倒くさくなり、途中から行かなくなった。「盗撮したい」。その気持ちだけがいつまでも残り、気付けば再び刑務所の中にいた。

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