7月26日に開幕するパリ五輪まで1カ月となった。日本選手団は6月末までにほぼ出そろい、海外開催の夏季五輪では過去最多となる400人の大台を超える見込みだ。トップアスリートが待ち望む祭典が刻々と迫っており、バスケットボール男子日本代表の河村勇輝(23)=横浜BC=にとっても自身のキャリアにおいて五輪は重要な位置付けで、コートに立つ瞬間に向けて鼓動を高鳴らせている。
日本代表の司令塔のガードを務め、一躍スター選手に駆け上がった河村。次世代を担う若者にとって、五輪は特別な存在であった。
福岡第一高時代に全国大会で4度頂点に立ち、輝かしい実績を引っ提げ東海大に進学。2年時に中退し、Bリーグ1部(B1)横浜ビー・コルセアーズの特別指定選手として加入した。
「(中退した)たった一つの大きな理由はパリ五輪に出場するため。国内最高峰のリーグで一日でも早く経験を積み、アピールすることが必要だと思っていた」。限りある競技人生を常に俯瞰(ふかん)し、「苦労は買ってでもした方が良い。早くから苦しい経験をした方が、これからのバスケ人生に生きていく」との父・吉一さんの言葉を胸に秘め、一途に歩んだ。
プロ契約1年目の昨季はリーグ最優秀選手賞(MVP)をはじめ、新人賞を含む6冠獲得で大ブレーク。横浜BCを史上初の4強入りに導いた。
自国開催となった昨夏のワールドカップ(W杯)では全5試合に出場し、48年ぶりの五輪自力出場に大きく貢献した。チーム最多の38アシストをマークするなど攻守で活躍。日の丸を背負う今、2年前の選択が正しかったことを証明した。