神奈川県横須賀市と福岡県北九州市を船で結ぶ「東京九州フェリー」は1日、2021年7月の就航から丸3年を迎えた。物流の動脈としての貨物輸送と、観光客の足としての旅客輸送の「二刀流」。トラック輸送に比べ環境負荷が少なく、運転手不足の対応策としても注目される。貨物、旅客ともに需要は伸びているというが、運航会社は「認知度がまだ足りない。今後も船内見学会やPR活動を行っていきたい」と話している。
同フェリーは国内の長距離フェリーとしては22年ぶりに就航した。2隻体制で、横須賀港発と北九州・新門司港発それぞれ1日1便を運航。客室は風呂付きのデラックスルームから大部屋のツーリストルームまで各種類ある。約21時間の船旅を楽しむため、露天風呂やレストラン、屋外でバーベーキューができるスペースなどを備える。
運航会社によると、旅客は関東地方から九州方面へが7割と大半を占め、目的は観光と帰省で9割を占めるという。
貨物面は時代の追い風を受ける。温室効果ガス削減対策として、長距離輸送をトラックから鉄道や船舶に転換する「モーダルシフト」が近年脚光を浴びる。さらにトラック運転手の残業規制強化に伴い、人手不足が予想される「物流の2024年問題」の対策の一つとしても有効だ。コンテナと載せる土台(シャシー)だけを船で運ぶ場合、運転手はフェリー発着時のみ必要で、労働力の省力化につながる。運ばれる貨物は、横須賀からは宅配貨物が多いほか、食料加工品や工業製品など。北九州からは主に農産物や冷凍食品などの食品加工品という。