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sumika、SHISHAMO、トゲナシトゲアリが“凱旋フェス” 地元・川崎で9千人沸かす

カナロコ by 神奈川新聞 2024年7月6日 14時10分

 6月29日に等々力緑地一帯で行われた川崎市の市制100周年を祝うイベント「かわさき飛躍祭」には多くの市民が訪れた。2020年10月にリニューアルされた等々力球場では初の屋外音楽イベント「かわさき100フェス」を開催。チケットの売れ行きが心配されたが、当日は約9千人が駆けつけ、川崎市出身のロックバンド「sumika(スミカ)」や「SHISHAMO(シシャモ)」、5人組ガールズバンド「トゲナシトゲアリ」が奏でるメロディーに体を揺らした。アーティストたちもまた地元での〝凱旋(がいせん)フェス〟に心を躍らせ、興奮が冷めやらなかった。

 ど派手にオープニングを飾ったのはsumikaだった。川崎市出身のボーカル・ギターの片岡健太らが2013年に結成し、昨年5月には横浜スタジアムでの10周年ライブも開催してきたが、片岡の胸には去来するものがあったという。

 「自分が生まれ育った場所で音楽フェスが生まれたら、どれだけうれしいだろうかということを想像していた。いろんな障壁があって実現しなかったけど、それから10数年が経過して実現した。やっぱり続けていると良いことがあるんだなというものをあらためて思っていた」。

 1曲目の「Lovers」から2曲目の「Starting Over」と会場内は瞬く間に熱を帯びていく。ドラムの荒井智之は「普通にボーッと見ていた川崎の空を見ながら、たくさんの人と盛り上がることができたことがすごくうれしくて感無量」とスティックを握る両拳は、いつにも増して力が入っていたに違いない。

 「100年後聞いても残るような音楽を残したい」―。曲目の合間のMCで、片岡は沸き立った熱い思いをそのまま口にしていた。川崎市の市制100周年と絡めて、その意味をこう表現した。

 「ステージ上で演奏しながら、初めて音楽は(後世に)残るかもしれないと思った。僕らの体はいずれ朽ちていくけど、音楽や、何かつくったもの、感情とかは100年後にも残っていく。何か新しい思考になるきっかけをもらった」

 バンド名の「sumika」には、「多くの人にとっての『住処』(すみか)、好きな場所になってほしい」との願いが込められているという。全力で演奏した全9曲は、ずっと焦がれ、思い描いてきた時間だったのかもしれない。

 川崎市内の中学校に通っていたというキーボードの小川貴之は「その当時の同級生に音楽で僕は生きていくんだ、と話したのが最初の夢の発言だった。時間を経て、こうして今、川崎市と一緒に力を合わせて音楽のイベントができて、なおかつ出演させていただいたことを考えると、本当に感慨深い。音楽の街としても、川崎市がずっとやってきて、その中で我々の音楽がこうやって球場で鳴ることもまた感慨深く、良い景色を味わわせていただきました」と大きな笑顔が広がった。

 続いて登場したのは、5人組ガールズバンド「トゲナシトゲアリ」。この日は、メンバーの1人が体調不良のため4人での演奏となったが、初めての屋外イベントとは思えない、堂々たるパフォーマンスで会場を沸かせた。1曲目の「名もなき何もかも」から、ラストソングの「雑踏、僕らの街」まで一気に駆け抜けた。

 4月に放送が始まったテレビアニメ「ガールズバンドクライ」の主人公たちの声優を務める彼女たち。川崎市を舞台にしたアニメは、ちょうど6月末で終わったばかりで、キーボードの凪都(なつ)は「その熱量をそのまま持ったまま、こうして大きいステージでライブができて、すごく幸せであっという間でした」と笑った。ギターの夕莉(ゆり)は「全力でいろんなわたしたちを知らない方にも届くような演奏ができたらいいなという気持ちで頑張れました」と言えば、ベースの朱李(しゅり)は「めちゃくちゃ緊張していたんですけど、ステージに立つとそういうことを考えられないぐらいにすごく楽しかった」と振り返った。

 今後はワンマンライブも予定され、アニメを飛び出した“リアル”な活動が続いていく。ボーカルの理名(りな)は「アニメという存在はものすごく大きいと思うけど、アニメに関係なく、一つのバンドとして、いろんな地方、海外に羽ばたけるようなバンドになっていきたい」。川崎で得た経験と自信を胸に、未来を刻んでいくはずだ。

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