横浜市戸塚区の東俣野地区で、一風変わった「小型バス」が走っている。誰でも無料で乗れて、予約は不要。運行を担うのは市でも企業でもなく、地元の特別養護老人ホーム「和みの園」だ。起伏に富んだ一帯では住民の高齢化が進み、病院やスーパー、路線バスの停留所までといった短距離の移動手段に課題があった。特養による手弁当のサービスが、地域交通の新たな形として定着しつつある。
「いやあ、間に合った」
国立病院機構横浜医療センターの入り口前。5人乗りの電気自動車(EV)「ひがまた号」に、近くに住む川戸昭生さん(82)がゆっくりと近づいてきた。
川戸さんはこの日、病院への行き帰りでひがまた号を利用した。昨年に脳梗塞の診断を受け、夫婦そろって免許を返納したものの、「この辺りの道は傾斜がきつく、車がないと大変。だから本当にありがたい」
妻の久子さん(80)も週3回ほど利用しているという。自宅から600メートル余り離れた国道1号には路線バスが走っているが、「昔は7、8分で歩けたけど、今は坂道がつらくて倍はかかる」。日常的な買い物をするのに、小型バスはもはや欠かせない存在だと話す。