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横浜の赤線地帯の女性、戦争孤児…戦後の「暗部」とらえた写真をデジタル化

カナロコ by 神奈川新聞 2024年7月20日 19時18分

 戦後80年の節目を来年に控え、横浜都市発展記念館(横浜市中区)が当時の横浜一帯で撮影された貴重な写真群のデジタル化作業を進めている。第1弾として、159点の画像データをホームページで公開した。赤線地帯で生き抜く女性や戦争孤児など、戦後社会の「暗部」に光を当てた作品を中心に紹介。タイトルと撮影年代を明示し、カメラマンが抱いた問題意識を分かりやすく発信している。

 取り上げたのは、戦後の代表的な女性写真家として知られる故・常盤とよ子さん、夫で戦争被害者の救済活動にも尽力した故・奥村泰宏(たいこう)さん、神奈川新聞の報道カメラマンだった五十嵐英壽(えいじゅ)さんの3人が、1940~80年代にかけて現横浜市域で撮影した写真。いずれも同館の収蔵品で、HP内の特設サイト「戦後横浜写真アーカイブズ」にまとめた。各作品のサムネイル表示を大きめに設定し、一覧性を高めたという。

 常盤さんの写真は31点を掲載した。胸から下にタオルを巻き付けた女性が姿見の前に座り、両手で髪の手入れをしている「夜の蝶へ」、米兵と女性が路上でたわむれている「伊勢佐木町裏」など、かつて売春が行われていた同市南区の赤線地帯での作品が目立つ。

 同館の研究員によると、45年5月の横浜大空襲で父を亡くした常盤さんは当初、米兵に依拠する形で生計を立てる赤線の女性に否定的な視線を向けていた。ところが、彼女たちの素顔に迫っていく内に別の感情が芽生え、次第に信頼関係を構築。2人の女性が肩を寄せ合って歩く「流行歌の合唱」をはじめ、日常の1こまを活写し続けたという。

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