石川県能登地方にルーツがある銭湯経営者と横浜の縁を伝えるパネル展が、横浜都市発展記念館(横浜市中区)で開かれている。横浜で成功を収めた銭湯経営者らが、恩返しのために故郷・能登に寄進した石像物などが今年1月の能登半島地震で相次いで倒壊した。「能登と横浜のつながりを知ってもらい、後世に残したい」と企画した。9月29日まで。
「能登半島と横浜─銭湯がつなぐ人びとの交流─」と銘打ち、写真など約60点を集めた。吉田律人主任調査研究員によると、横浜市内の銭湯47軒中、26軒の経営者に石川県とのつながりがあった。明治期から高度成長期にかけて上京した人々が銭湯を経営し、横浜の公衆衛生を支え続けた歴史があるという。
会場1階には、地震で破壊された中能登町や七尾市の鳥居の写真などを展示。「横浜市」の文字と能登出身の銭湯経営者の名が刻まれた鳥居もあり、被害の実態を伝えている。今も客が集う「利世館」(横浜市中区伊勢佐木町)の経営者らが1922(大正11)年に中能登町の神社に寄進した石鳥居と、29(昭和4)年に建立したこま犬も写真で紹介している。
4階には、50年代の「中の湯」(横浜市西区藤棚町)の状況を示す写真を展示し、従業員による清掃作業や周辺風景などが分かるようにした。
銭湯の歴史に詳しく、2017年から石川、新潟両県で調査を重ねてきた吉田さんは、帰省中の新潟で能登半島地震に遭った。「被災地で多くの歴史と記録が失われる中、能登と横浜のつながりを伝え、記録を次世代に継承したい」と思いを込めている。
午前9時半~午後5時。月曜休館。観覧料などの問い合わせは、横浜都市発展記念館電話045(663)2424。