無我夢中で追いかけるのは、無敵のヒーローだった父の背中だ。朝飛道場(横浜市神奈川区)で稽古に励む私立横須賀学院中3年・井上芽翼(めい)(15)は、シドニー五輪柔道男子100キロ級金メダリストで日本男子前監督の井上康生さん(46)を父に持つ。現在はパリ五輪日本選手団の副団長として代表選手たちを見守る父親に、「自分も将来はパパのような立場にもなりたい」と中学最後の夏を力強く歩む。
7月下旬に行われた全国中学校体育大会(全中)の予選を兼ねた県中学校総合体育大会。観客席に父の姿はもちろん、ない。昨年の女子57キロ級個人戦では準優勝だった芽翼は「今年は個人も団体も優勝するという気持ちで闘った」と静かに心を燃やしていた。
身長165センチの娘の得意技は父と同じ内股。「(父のような)背負い投げは得意ではないけど、しっかりと技で決め切るのが自分の強み」と日本柔道の王道スタイルを受け継ぐ。
初日の女子63キロ級個人戦は1回戦から3戦連続で一本勝ち、決勝も合わせ技で一本。昨秋から階級を上げて初の栄冠をもぎ取った。最終2日目の団体戦では中堅として朝飛道場をけん引。決勝は相手の隙に素早く反応して横四方固め。抑え込み一本勝ちで初の神奈川制覇の立役者となった。