「ブレイキンの聖地」と呼ばれる川崎もまた歓喜に沸いた。パリ五輪で初採用されたブレイキンの女子で9日、川崎市在住の湯浅亜実選手(25)=ダンサー名・AMI=がリトアニア選手を破り、初代女王に輝いた。同日の市産業振興会館(川崎市幸区)では市の主催でパブリックビューイング(PV)が行われ、駆けつけた約130人の市民らがスクリーンに映し出される“仲間”に声援を送り、会場は熱気と興奮、喜びに包まれた。
試合を重ねるごとに会場内のボルテージは上がっていった。激しい動きを瞬時に止める「フリーズ」など緩急を織り交ぜた完成度の高い流れるような技の数々に歓声は鳴りやまない。
10日午前4時半過ぎ、金メダルが決まると盛り上がりはピークに達した。
「ちゃんと努力が実った。本当にすごい。誇りに思う」。湯浅選手が所属するチーム「GOOD FOOT」のYOSHIKIさんが目尻を下げると、同じくGEN(ゲン) ROC(ロック)さんは「決勝のみならず、最初から自分らしい踊りができていた。うれしいし、最高」と笑った。2人はすぐに撮影した祝福のメッセージを湯浅選手に送ったという。
湯浅選手は「ブレイキンの聖地」として世界的に知られるJR武蔵溝ノ口駅(同市高津区)の通路などで腕を磨いてきた。大学卒業後には埼玉から川崎市に移り住んだほどだ。今回の予選と決勝の合間に、1対1のバトルの対戦を実演した2018年のユース五輪金メダリストの河合来夢さん(同RAM)は「五輪に向けてしっかり仕上げて、本当に楽しみながら力を発揮していた。自分たちの分までやり遂げてくれた」とたたえていた。
次の2028年のロサンゼルス五輪ではブレイキンは採用されないことが決まっている。固唾(かたず)をのんで見守っていた会社員の岩崎カンナさんは「ダンスがオリンピック種目に入ったこと自体がビッグニュースだった。最初の金メダルを日本人が獲得したことは(競技が不採用となっても)五輪が続く限り語り継がれていくと思う」と感慨深げに話していた。
ブレイキン男子の予選・決勝も10日午後10時から市産業振興会館(川崎市幸区)でPVを開催する。日本選手団の旗手を務めた川崎市在住の半井重幸選手(同SHIGEKIX)は金メダル候補とされる。
入場無料で定員300人。先着順。18歳未満は入場不可。問い合わせは川崎市市民スポーツ室電話044(200)1722。