神奈川県寒川町で江戸時代から続く夏の風物詩「大山灯籠」の点灯が、後継者不足を理由に今夏で終了する。最後の点灯は16日夕となる。
14日夕、同町岡田4丁目にある灯籠の火袋にろうそくを入れ、明かりをともした近くに住む農家の後藤昌夫さん(90)は「これが(当番の)最後と思うと寂しい。灯籠がこの町にあったことを、一人でも多くの人に覚えていてほしい」と話した。
同町教育委員会の元教育長で、大山灯籠に詳しい三澤芳彦さん(71)によると、同町の大山灯籠は関東各地から大山阿夫利神社(伊勢原市)を参拝する「大山行」の人々が道に迷うことのないように設置され、江戸時代から続いているという。大山の別名「あめふり山」にちなみ、農家などが五穀豊穣(ほうじょう)を願って、明かりをともしていたという。
現在は毎年7月25日から8月17日までの間、灯籠を建て、住民が交代で日が落ちる頃に火を入れている。以前は町内外に数多くの灯籠が建てられたというが、同町内では現在3基だけが残り、明かりがともるのは岡田4丁目の1基のみとなっていた。
三澤さんは「かつて約50軒の民家で灯籠の明かりを守っていたが、今では9軒となり、負担が大きかった。歴史ある灯籠なので、保存方法を検討したい」と話していた。