岸田文雄首相の自民党総裁への再選不出馬表明を受け、総裁選を9月初旬に前倒しするムードが出てきた。同月22日から各国首脳による国連の重要イベント「未来サミット」が開かれるため。「新首相を送り込めば日本を強くアピールできる」(自民幹部)からだ。お盆期間中の突然の表明劇で新内閣発足を見据えた対応に追われる官僚の間では「酷暑の次は酷使の秋だ」とのぼやきが漏れている。
総裁選の日程は今月20日に決定される見通しだ。岸田文雄首相の党総裁任期は9月30日まで。総裁公選規程で「議員投票は総裁の任期満了前10日以内に行う」と定めていることに照らし、茂木敏充幹事長は「9月20日から29日までのいずれかに設定される」と説明してきた。国連日程と重なることにも「影響されない」としている。
しかし現職撤退で新首相の誕生が確実な情勢となり、党内の雰囲気が変わってきた。小泉進次郎元環境相(衆院11区)や小林鷹之前経済安全保障担当相らの出馬が取り沙汰され、若返りも期待される中で「新首相を国際舞台でデビューさせればまん延していた停滞感を一掃できる」(自民幹部)との皮算用が成り立つ。「内閣支持率アップのままに10月解散に突入」(同)とのもくろみものぞく。前倒し論が日に日に高まるゆえんだ。
国連日程から逆算していくと9月15日の週を新総裁決定直後の臨時国会に充て、首相指名と新内閣発足を行う。同月8日の週に投開票を設定すると、1日の週に告示というタイトな日程だ。もとより野党の協力が不可欠だが、誰が調整役を担うのかも未定で混乱は避けられそうもない。