岸田文雄首相(自民党総裁)が訪米中に開催される9月下旬の国連総会を巡り、自身の一般討論演説を見送ることになり、政界内で波紋が広がっている。自らの後任が決まる総裁選投開票(27日)までの帰国が間に合わなくなることが理由。「外交の岸田」を掲げてきた首相が寂しい幕引きを迎える一方で「国連軽視」との批判は新首相に向けられ、就任早々に野党の追及にさらされるのは必至だ。
政府関係者によると、一般討論演説は現地(国連本部のある米ニューヨーク)の時間で9月24日から30日の日程で行われる予定。日本は26日午後の枠を割り当てられた。日本政府として前倒し実施を交渉したが「国家元首が最優先」などの慣例からかなわず、総裁選までの帰国を優先することになったという。
岸田首相は8月27日の党役員会で国連総会について「諸般の事情が許せば出席したい」と表明したばかり。演説にも意欲を見せていたという。
総裁任期は9月30日まであり、国連の日程案を踏まえて総裁選投開票を後ろ倒しする余地は残されていた。自民内からは「官邸と党の連携がとれない現内閣の惨状を露呈する象徴的な出来事だ」(閣僚経験者)との嘆きが漏れる。