台風10号に伴う大雨で神奈川県二宮町内の葛川が溢水(いっすい)したとして、町は30日午前7時、大雨の際に発表される情報の中で最も危険性の高い警戒レベル5の「緊急安全確保」を初めて出した。県内では2例目で、町防災安全課は「判断は難しかったが、(階上へ逃れる)『垂直避難』などを促すため発令した」としている。
同課によると、▽葛川から水があふれていた▽雨の降り方が激しく、今後もしばらくやみそうにない▽場所によって道路上の水位が自動車の半分程度まで上がってきている-などを考慮して村田邦子町長と協議した上で判断した。その後、川の水位が低下したことや、降雨が小康状態になったことを受け、同9時半に解除した。
町は町内4カ所に避難所を開設し、多いときで計8世帯11人が避難した。町には少なくとも30件の浸水被害の報告があったが、けが人などの情報は入っていないという。
同課は想定よりも避難者が少なかったことについて「自宅の方が安全と判断した人が多かったのではないか」と分析している。それを裏付けるように40代女性は「緊急安全確保は出たが、避難するより家の方が安全だと思い家にとどまった」と振り返る。
60代男性は、緊急安全確保が午前7時に発令されたタイミングに触れ「すでに午前6時ごろから葛川の水位が上がってきていた」と指摘。「発令が少し遅かったのではないか」と苦言を呈した。ただ男性も葛川は以前にも水があふれたことがあったため、それほど危険ではないと考えて自宅にとどまったという。
50年ほど葛川の近くで暮らしているという80代の無職女性は「道路に20センチぐらいまで水が溜まっていたのを見たのは初めて。じゃぶじゃぶ波が打っていて、歩けないくらいだった」と話す。川沿いのカフェでは、水が床上20センチ程度まで入ってきたという。男性店員によると、店内の電化製品が使えなくなってしまい、「今日はもともと休業日だったが、営業再開の見込みは立たない」と頭を抱えていた。