先月末の台風10号に伴う大雨は神奈川県西部の各地に被害をもたらした。秦野市内では足柄茶を生産する高梨茶園(高梨孝代表)の茶畑が土砂と共に流出。同茶園は2019年の台風19号でも大きな被害を受けており、高梨代表は「精神的にも個人的な負担としても厳しい。復旧へ最善の方法を見つけていきたい」と懸命に前を向いている。
同茶園は足柄茶の品評会で何度も表彰されるなど、市内屈指の名茶園。茶畑は昭和期の秦野の産業を支えた、葉タバコ栽培で培った土作りを生かすなどのこだわりがある。
そうした茶畑で8月30日午後3時ごろ、異変が起きた。
市内では29日からの総雨量が約300ミリに達し、土砂災害警戒レベル4「避難指示」が発令されるなど状況は切迫していた。近くの住民から「赤い汚れた水が流れている。高梨さんの畑ではないか」との連絡があった。それまで強い雨が30分ぐらい続いており、嫌な予感はあったという。事前に畑から排水するために水路を確保するなど対策はしていたが、自然の猛威はそれ以上だった。
「現場に行ったらひどくやられていた。深い所から水が湧き出して土砂を持っていかれ、その量も半端なかった」と高梨代表。斜面に作られた茶畑の最上段が深さ3、4メートルほどえぐられて地滑りのように崩れ、それが200メートル超にわたっていた。茶畑の上部にあたる斜面に地形的なくぼみがあり、そこに集まった水が地下を流れて一気に茶畑ごと崩落させたとみられる。「人間の力でどうにかなるものではない」(高梨代表)被害にため息は深い。