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鎌倉の市役所移転、市監査委員が「政治介入」 松尾市長も“援護射撃”に困惑、波紋広がる

カナロコ by 神奈川新聞 2024年9月5日 20時37分

 鎌倉市役所の移転計画に反対する市民が移転予算の執行停止を求めて住民監査請求をした問題で、市監査委員が8月の監査結果に「(庁舎移転は)松尾崇市長の選挙公約であり、不退転の覚悟で政治責任を全うすべきだ」とした意見を付けていたことが5日、分かった。政治的中立が求められる監査委による庁舎移転の“支持表明”とも読み取れる記述に市側も困惑し、反対派市議も「監査委の政治介入」と反発し波紋が広がっている。

 監査請求は7月、同趣旨の2件を計153人が連名で提出。庁舎移転の前提となる位置条例改正案が2022年に市議会で否決され、今後の移転の実現性が不透明となっていることから、市が計上した新庁舎の基本設計委託費など約3億円の予算は「違法もしくは不当」として支出を差し止めるよう求めた。

 これに対し、8月30日付の監査結果は「位置条例が将来にわたって可決される可能性がないと断定できない」と予算執行を適法と判断。付帯意見を付け、市の方針を「市民の安全と市の将来像を見据えた政策の柱」と理解を示した上で、市民間の対立が深まっているとして「松尾市長自らが先頭に立って市民との対話を重ね、事態の打開に向けた努力を望む」と市側に“エール”を送った。

 監査委は市から独立し、有識者と市議からそれぞれ1人が選ばれ、市議会の同意を得て市長が任命する。有識者としてコンサルタントの八木隆太郎氏、市議会から公明党の大石和久氏が務めている。大石氏は移転推進の立場から22年の位置条例改正案には賛成票を投じた。

 地方自治法は監査委に「公正不偏の態度」を求めており、移転反対派の市議は「監査委が政治をやっていいのか。市長の公約まで言及するのは完全な越権行為」と批判。監査委の経験がある別の市議も「監査委の意見ではなく完全に議員としての意見。監査委のあるべき姿ではない」と首をかしげる。“援護射撃”を受けたはずの松尾市長も「いつも監査委には厳しい指摘を受けているので、今回の監査結果には違和感もある」と困惑した様子を見せた。 

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