自民党総裁選(27日投開票)を巡り、小泉進次郎元環境相(衆院神奈川11区)が提起した解雇規制の緩和が争点化している。小泉氏は出馬会見で「聖域なき規制改革」の目玉公約として企業が余剰人員を削減する「整理解雇」の要件緩和を掲げた。これに対し「企業が解雇しやすくなる」との批判や他候補からの攻勢を受けて「緩和ではなく見直し」と軌道修正。歯切れの良さで実行力をアピールしてきただけに、総裁選の行方を左右しかねない論戦が今後も展開されそうだ。
「労働市場改革の本丸である解雇規制を見直す。人員整理が認められにくい状況を変える」。小泉氏は6日の出馬会見でこう述べた。整理解雇の4要件のうち、「解雇回避の努力」を大企業に限って撤廃すると主張。代わりにリスキリング(学び直し)や再就職支援を義務付けることで人材の流動性を高めるとし、「不退転の覚悟で来年には法案を提出する」と強調した。
しかし13日の党本部での共同記者会見では他の候補者から異論が相次いだ。小林鷹之前経済安全保障相は「安易な規制緩和は働く人を不安にさせかねない」と批判。加藤勝信元官房長官も「働く方々の思いを踏まえて議論することが大事だ」と慎重な姿勢を示した。
小泉氏は「解雇の自由化を言っている人は私も含め誰もいない」と語気を強めたが、具体策については言及を避けた。「企業は解雇しやすくなるのでは」などと批判が高まったことから、小泉氏は14日の日本記者クラブ主催の公開討論会で「緩和ではなく見直しだ」と当初の説明をトーンダウンさせた。
小泉氏の対応に石破茂元幹事長は「本当に労働者の権利が守られるかはきちんと確認しないと。具体的にならないと分からない」とくぎを刺し、条文化を急ぐよう異例の“注文”をしてみせた。