自民党総裁選(27日投開票)では候補者9人のうち5人が、親などの親族が国会議員の「世襲議員」だ。県内選出の小泉進次郎元環境相(衆院15区)、河野太郎デジタル相(11区)はともに広く知られる政治家一族。強固な選挙区(地盤)、知名度(看板)、資金力(かばん)を引き継ぐことに野党などから批判が上がるが、両氏の反応はくっきりと分かれた。
「2代続けて(首相)という思いはない。父は父、私は私。ただ、私が父に感謝しているのは政治家である前に良き父であってくれたことだ」
曽祖父から数えて4代目。100年以上続く地盤を引き継ぐ小泉氏は5日、横浜市内の視察先で記者団から世襲批判への受け止めを問われ、こう答えた。
父・純一郎元首相は忙しいさなかでも、野球少年だった小泉氏のキャッチボールの相手をしてくれた。その背中を見て育ち「世襲批判があっても、父と同じ道に行きたいという気持ちになった」と語った。
「できることなら後を継ぎたい」と申し出た際、純一郎氏は複雑な表情を浮かべたという。世襲であるか否かにかかわらず「日本はもっと良くなるという強い思いがなければ、この世界には飛び込めない」と強調。6日の出馬会見でも、「世襲と思われたとしても、それ(批判)を上回るに値するような政治家として認められるよう最大限努力したい」と前を向いた。
一方、河野氏は、祖父・一郎元農相(故人)が1964年、当時の首相・池田勇人の後継として有力視されたが、実際に指名されたのは佐藤栄作だった。元衆院議長の父・洋平氏は93年に党総裁に就いたが、野党だったため首相にはなれなかった。
河野氏は8月末、神奈川新聞社の単独インタビューで「祖父と父が就けなかった総理大臣という存在をどのように捉えているか」との質問に、「一郎さん、洋平さんは関係ない。総理になるのが大事なのではなく、自分の政策を実行するには総理になるのが一番できるから目指している」と語気を強めた。
1996年の衆院初当選から首相になる目標を掲げ、今回の総裁選で3度目の挑戦となる。記者から「総理は河野家三代の夢では」と「夢」を引き合いに重ねて問われると「それは世の中に対して失礼な質問。そんな質問すること自体、国民をなめていないか」と不快感をあらわにした。
総裁選では他に、父親から地盤を引き継いだ石破茂元幹事長と林芳正官房長官、妻の父が国会議員の加藤勝信元官房長官がいる。
こうした世襲議員を「金魚」に見立てて批判するのは、立憲民主党代表選で有力視される野田佳彦元首相だ。「金魚たちに立ち向かっていく『どじょう』でありたい」と述べ、「世襲を制限すべきだ」と次期衆院選で争点化する構えを見せている。