神奈川県真鶴町の選挙人名簿抄本の不正利用問題を巡り、建造物侵入と窃盗の罪に問われた前町長、松本一彦被告(58)=同町=と元町選挙管理委員会書記長の被告(60)=同=の判決公判で、横浜地裁は26日、松本被告に懲役10月、執行猶予2年(求刑懲役1年)、元書記長の被告に懲役8月、執行猶予2年(求刑懲役10月)を言い渡した。
判決によると、2人は2020年2月、不正入手した鍵で町の書庫に侵入。19年4月の知事選で使われた選挙人名簿抄本を持ち出して盗んだ。
吉井隆平裁判官は判決理由で「町職員としての知識や立場を利用した反規範的な犯行で、刑事責任は軽いとはいえない」と非難。一方で、松本被告は解職請求により町長を失職し、元書記長の被告も懲戒免職となるなど社会的制裁を受けているほか、一部町民らが損害賠償を求めた訴訟の判決を受けて松本被告が賠償したことなどを踏まえ、執行猶予判決とした。
罰金刑が相当とした弁護側の主張は「投票の有無も記載された名簿抄本を持ち出して利用したことは軽視できない」として退けた。
松本被告は20年9月の町長選で初当選。名簿の不正利用が発覚して21年11月に辞職し、出直し町長選で再選されたが、23年9月の住民投票でリコール(解職請求)が成立して失職した。
町は22年9月、現職町長だった松本被告らを刑事告発。県警が書類送検し、横浜地検が今年5月に在宅起訴した。地方公務員法違反や公選法違反、一部の窃盗容疑は不起訴とされた。