県内で今夏、労働災害による死者が急増した。今年6月末までの累計は10人で、7、8月は8人に達した。とりわけクレーン作業に関連する労災が目立つ。厚生労働省神奈川労働局は「異常な事態」として、業界全体に防止策の徹底を緊急要請した。
貨物運送業の70代男性は8月、トレーラーの車両内で待機していたところ、山積みされていたコンテナがクレーンのつり具にぶつかって崩れ、車両ごと下敷きになった。8月の労災死者は5人。うち、こうしたクレーン作業関連は3人を占めた。
労働局が目指す年内の労災死者は26人以下で、8月末で18人に達している。前年同期より6人少ないものの、「目標の達成が危ぶまれる極めて憂慮すべき事態」として9月、業界8団体に7年ぶりに緊急要請した。器具の事前点検やクレーン運転の定期的な教育といった七つの具体策を順守するよう求めている。
今年8月末までの労災死傷者(休業4日以上)は4706人で前年同期より214人多く、働き手として増える高齢者が押し上げている。藤枝茂局長は「エビデンス(根拠)はないが、暑さで集中力が低下したり、疲れがたまったりしているのではないか」とみている。
労働局は10、11月、死亡労災の傾向からリスクアセスメントの課題を探る講習会を横浜市と平塚市で開く。企業の模範的な安全衛生管理の実例も紹介する。