1977年に北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=失踪当時(13)=が5日に60歳の誕生日を迎えるのを前に、愛娘の帰国を切に願う母早紀江さん(88)が3日、川崎市で報道陣の取材に応じ、「帰ってきてくれればいい。だまって抱きしめてあげたい」と語った。米寿の早紀江さんは早期解決へ声を上げ続けている。
早紀江さんの手元には、親子の思い出の品が置かれていた。手に載るほどの小さな焼き物の壺で、当時小学5年のめぐみさんから早紀江さんへ贈られた。
「『母さんが好きそうだから』と言っていた。すごく気に入っていて大事にしている」。幼いめぐみさんのその細やかな心遣いがうれしかったという。
着物姿のめぐみさんが写る一枚は、寝室に置いている。えんじ色をした着物はかつて早紀江さんが着ていたものだった。「大人になったみたい」とめぐみさんは当時、うれしそうに話した。早紀江さんも「見ちがえるようになるね」とほほえみ返した。
穏やかな日常が奪われたのは1977年11月15日。当時中学1年のめぐみさんは下校中に、北朝鮮の工作員に拉致された。早紀江さんは「本当にむなしい。現実とは思えない。こんな思いを47年間も持ち続けなければならない人生ってなんなんだろう」と心痛な思いを口にした。
2002年の日朝首脳会談で初めて拉致を認めた北朝鮮は謝罪し、拉致被害者5人が帰国した。その後、めぐみさんの遺骨とされるものも提供されたが、鑑定で別人と確認され、日本政府は再調査を求めている。しかし進展はない。
早紀江さんは「悪いことをしていないのにさらわれたまま。何も分からないままでもうこれ以上過ごしたくない」と拉致問題の早期解決を強く訴えた。