開成町で栽培され、甘みとねっとりとした食感が特徴のサトイモ「開成弥一芋(かいせいやいちいも)」のブランド化が成功し、生産量がここ数年で急増している。かつては栽培農家が少なく、市場に出回らない“幻のサトイモ”だったが、13年前に地元農家らが復活させた。現在では県内で広く流通するようになり、町特産品としての地位を不動のものにしている。
開成弥一芋は1903年に町出身の農家高井弥一郎が入手した種芋を町内で栽培したのが始まり。戦前には関東一円で栽培されたが、戦後は稲作に押されて栽培する農家はほとんどいなくなった。
「かつて親しんでいた味を復活させたい」と2011年に地元農家の有志が研究会を発足させ、県農業技術センターが保存してきた種芋を取り寄せて栽培を始めた。流通大手のイオンリテールと販路開拓などで連携し、ブランド化を進めた。
当初2、3トンだった出荷量は今年は17トンを見込むほどに増えてきた。ここ数年は若手農家が参入し、それまで10トンほどだった出荷量が一気に伸びたという。研究会の辻理孝会長は「煮物でもコロッケにしてもおいしい。味が評判になり、もっと作ってほしいと引き合いが多く、生産が追い付かない」と明かす。
町内のイベントではコロッケの材料に使われ、町立小中学校の給食ではカレーやフライとして味わう人気メニューになっている。辻さんは「多くの人の努力でブランド力のアップに成功した」と笑顔を見せる。
現在は町内の農家22人が栽培し、今年の作柄は良好という。9日から出荷が始まり、イオンとマックスバリュの県内全38店などで順次販売される。