27日投開票の衆院選は終盤戦を前に、政党幹部が次々と神奈川県内候補の応援に駆け付けている。2022年の安倍晋三元首相銃撃事件後初の総選挙ということで、神奈川県警はかつてないほどの厳戒態勢で要人警護に当たっているが、19日に都内の首相官邸などが襲撃される事件が発生したこともあり、県警はさらに警戒を強化。県警幹部は「銃撃事件の惨劇を繰り返してはいけない。1ミリも油断することなく、任務を遂行したい」と神経をとがらせる。
17日に横浜市港北区内の寺院で行われた自民党立候補者の街頭演説会。応援に入った岸田文雄前首相がマイクを握った場所は、聴衆からかなり距離を置いた庫裏2階のベランダだった。
岸田前首相は昨年4月、和歌山市内での演説直前にパイプ爆弾を投げられ、警察官ら2人が軽傷を負った。今回の県内入りを巡っては、陣営側と県警で協議を重ね、従来のように駐車場内の選挙カーの上で演説することも一時検討したが、聴衆との距離が確保できないとして、駐車場の隣の庫裏を使う形で決着した。
この日、県警が動員したのは約300人。寺院の駐車場に聴衆スペースを設け、最前列には不審者が飛び出すのを防ぐための柵を置いた。さらにその前に警察官3人が並んで“壁”を作り、周辺の建物の屋上など高所を含めて至る所で監視の目を光らせた。駐車場入り口では、陣営スタッフが金属探知機を使いながら聴衆の手荷物を検査した。
会場を訪れていた自営業の女性(57)=同区在住=は「物々しい雰囲気」と目を見張りながらも、「襲撃事件が起きた場合、私たちも巻き込まれないかと不安になる。でも、これなら安心できる」と話した。
銃撃事件前までは、政党幹部らに聴衆が近づけるような演説会場も多く、安倍元首相の銃撃現場では周囲をガードレールで囲まれていたものの、安倍元首相後方の警戒が手薄だったとされている。岸田前首相の襲撃事件では、約10メートル離れた聴衆スペースから爆発物が投げ込まれ、聴衆との距離が大きな課題となった。