27日投開票の衆院選で、神奈川4区は自民党前職の山本朋広が立憲民主党前職の早稲田夕季に惨敗した。山本はこの選挙区で過去4回連続で比例復活してきたが、今回は家庭平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が問題視され逆風となり、比例復活もかなわなかった。有権者からもメディアからも「逃げ腰姿勢」で、戦前から諦めムードが漂っていた12日間の選挙戦を振り返る。
■「カルトにノー」、有権者の冷たい視線
16日午後6時、買い物客でにぎわうJR大船駅東口(鎌倉市)で山本は約2時間、ひたすらビラを配っていた。横には「カルトにノー」と書かれたのぼりがアピールしていた。
教団トップを「マザームーン」と呼ぶ様子が報道され、有権者の冷たい視線が突き刺さる。ビラを手にする人はごくわずかで通りすがりに山本と親しげに握手した男性も去り際に「カルトにイエス」と笑っていた。
「まるで自分が信者だとデマが流され、自分もある意味で教団の被害者」。山本はこれまで支援者の前では釈明してきたが、街頭でその「誤解」を解こうとはしなかった。この日、ビラ配りを手伝った地方議員もマイクを握って政策や実績を語ることはなかった。
山本は「テレビカメラに写されると面白おかしく取り上げられる」と警戒し、街頭活動の日程は非公表。朝夕の駅前など大勢が集まる場での演説はほとんどなく、対立陣営からは「山本本人はもう諦めているらしい」との臆測も聞かれた。
■元ライバルとの「相乗効果」なく
頼みの綱は保守分裂となった前回衆院選の相手で、現在は自民党の参院議員となった環境相・浅尾慶一郎だった。前回約6万4千万票を得た浅尾票が山本に上乗せされれば、計算上は早稲田を上回る。山本は「(22年の)参院選で浅尾氏を応援した。選挙の借りは選挙で返すもの」と全面支援を期待していた。だが、山本は前回から3千票以上を減らし、結果的に相乗効果は見られなかった。
閣僚として全国を回る浅尾が地元入りしたのは選挙戦最終日26日。土曜日の午前8時、浅尾は人も少ない大船駅で5分だけ演説すると、山本と共に選挙カーで1時間ほど回った。遅すぎる援護射撃の理由を尋ねられた浅尾は「山本事務所から応援依頼がなかった」とつれない反応だった。