生まれつき難病で車いす生活をしている小学4年生の前田詩生(しお)さん(10)=鎌倉市=が、パリ・パラリンピックの観戦をしたいと自作のチーフを販売して渡航費の寄付を募り、念願の“聖地”を訪れる夢をかなえた。パリの地で活躍するトップアスリートの姿に「速くて格好良かった。自分も車いすバドミントンの選手になりたい」と新しい夢を膨らませている。
詩生さんは骨の成長に影響を及ぼす難病「軟骨無形成症」で左の手足にまひがある。2021年の東京パラリンピックをテレビ観戦し、パリ大会の観戦を夢見るようになった。渡航費を賄うため、母・可奈さん(43)らと共に自ら描いた世界中の選手たちの絵をプリントしたチーフを1枚3千円で販売し始めた。
詩生さんの夢を応援しようと全国から申し込みがあり、250枚以上が売れて目標を達成。詩生さんと可奈さんは今年8月21日から9月4日までの行程でフランスに渡ることができた。
2人は開会式と車いすバスケットボール、車いすバドミントンの試合を観戦。日本とフランスの国旗も自作し、日本選手団にエールを送った。コンコルド広場で行われた開会式ではフランス国旗を模した煙が立ち上がる演出に、詩生さんも「みんなが笑っていて楽しい気分になった」と忘れられない思い出になった。
パリではバリアフリー化されていない施設も多かったが、その場にいる人々が車いすを運んでくれた。手を差し伸べてくれた人たちに詩生さんはお礼に自分で作った折り鶴を渡したという。
詩生さんは旅の思い出を一枚一枚、絵に描き、今後は冊子にまとめ、寄付してくれた人たちにお返しする計画という。可奈さんは「想像以上の寄付の反響で夢をかなえさせてもらえた。わが子の障害で苦しんでいる多くのお母さんたちに、自分たちがこんな楽しい旅ができたということが励みになってほしい」と願っている。