被爆者の全国組織である日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞決定を受け、神奈川県内の被爆者らが10月31日、大船観音寺(鎌倉市)境内の原爆犠牲者慰霊碑を訪れた。差別が根強い時代から声を上げて被爆者援護と核兵器廃絶を訴えてきた先人たちに平和賞を報告。核なき世界への思いを新たにした。
「先輩たちの顔が何人も浮かんだ」。長崎で被爆した福島富子さん(79)=葉山町=が感慨深げに話す。
この日、慰霊碑を訪れたのは被団協に属する県組織の「県原爆被災者の会」で役員を務める被爆者や被爆2世ら9人。碑前に花を手向けて手を合わせ、受賞決定を伝えた。
同会は、被団協設立(1956年)と同時期に県内の仲間づくりを始め、66年に結成された。現会長で広島で被爆した丸山進さん(85)=相模原市=は「当初は会員を募るのに大変苦労したそうだ。被爆者であるということを知られたくないという人は今でもいるくらいですから」と話す。
被爆石が載せられた慰霊碑は同会が被爆25年の記念事業として計画し、70年に完成。援護拡大の運動とともに、「同じ思いを他の誰にもさせたくない」と署名や証言を通じて核廃絶を訴えてきた先人たちの名前も納められ、碑前では毎秋、慰霊祭が営まれている。