陽光を求めて走り続けた。山あり、谷ありのシーズン。自らの存在価値を証明した横浜FCのFW小川慶治朗(32)は「結果が全て、昇格が全ての試合。みんなプレッシャーがあった中で耐え抜いたのは成長といえば成長」。粉骨砕身、J1へと導く姿はただただ、まぶしかった。
立ちこめる暗雲を振り払ったのは生粋の関西人だった。昇格に王手を掛けながら2連敗。不退転の決意で挑んだ前節栃木戦もドローでつかみ損ねた。その夜、チームのラインに一通のメッセージが届いた。
「まだ優位な状況に変わりはない。でも、雰囲気が悪かったら勝てる試合も勝てない」。添えられていたのは頭頂部まで刈り上げた小川の写真だった。
つるりと五厘刈りに仕上げるのは神戸時代の2017年、20年に続く3度目だという。「17年は第3節の開始3分で鎖骨を折ったので一発気合を入れなあかんなと。20年はコロナもあったので心機一転。良い兆しがあったので」。そんな験担ぎもあるけれど、一番はチームのムードを変えたかった。
「少しでも笑ってもらったら幸いですと。ニヤけたり、『何してんねん』て思ってもらうことが目的だった」。思えば幼少期から憧れを抱く元ブラジル代表FWロナウド氏も、2002年の日韓ワールドカップ(W杯)で奇抜な「大五郎カット」とともに優勝を果たした。身も心も軽く─。そんなベテランの心意気にチャンスの神様も笑ってくれたのかもしれない。
神戸でエースナンバーの13を背負い、活路を求めて横浜FCに加わったのは21年。昨季はJ1で24試合無得点と苦しさも味わった。再び背番号13を背負い34試合7ゴール。まっしぐらに突っ走った先には青々とした絶景が広がっていた。
「坂道を転がるときは一瞬。ゆっくり積み上げながら上がってきたものが、転げ落ちるときは一瞬で、そういうもろさが出たことは反省点」。激動のシーズンの教訓を糧に再起を誓う。「来年J1で戦う上では、毎回こういうシビれるゲームになる。勝っていくためにも、まだまだ成長が必要」