北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=失踪当時(13)=の弟、横田拓也さん(56)が22日、川崎市立王禅寺中央中学校(同市麻生区)で生徒たちに向けて講演した。拓也さんは拉致問題の悲惨さや不条理を胸に抱き、時折、言葉を詰まらせながらも「自分事として考えてほしい」と生徒に訴えた。
「この写真を見ると心が苦しくなる。こんなに悲しい顔をした姉の姿を見たことがない」
拓也さんは、北朝鮮から日本政府を経由して提示された、めぐみさんの写真をスライドに写して話した。
「積極的で明るいお姉さんのイメージ」と拓也さん。一家だんらんで過ごした日々は、めぐみさんが姿を消すと、一変した。
当時9歳だった拓也さんは、めぐみさんが突如としていなくなったことに対して全く意味が分からなかったという。「姉がいなくなった翌日から1カ月間が、一番辛かった」と険しい顔で振り返った。
体育館に集まった全校生徒約340人に向け、拓也さんは「拉致問題は歴史の話ではなく、現在進行形の未解決事件であること。人道問題であることを感じながら、自分ごととして意思表示をしてほしい」と呼びかけた。