石破茂首相は29日の所信表明演説で「103万円の壁」の引き上げを明言した。衆院選で躍進した国民民主党の主張をのんだ格好。自民・公明の与党には焦燥感が漂う。引き上げ幅や財源策は見通せず、少数与党による混迷の国会の幕開けとなった。
首相は「経済政策のとりまとめに当たっては党派を超えて優れた政策を取り入れる」と前置き。「『103万円の壁』については2025年度税制改正の中で議論し引き上げる」と説明した。詳細について「これらに伴う諸課題に関しては今後検討する」として明らかにしなかった。
「野党であっても国民にとって必要として掲げた政策が、総理の言葉として演説になったことは感慨深い」。国民民主党の深作ヘスス氏(衆院比例南関東)は本会議場の自席から「103万円の壁」に言及した首相に拍手を送った。しかし「一歩踏み出したが、ここがゴールではない。具体的に言明していないのでもろ手を挙げて拍手する気持ちではない」と険しい表情を崩さなかった。
自民の中堅議員は「自公だけでは経済対策や補正予算は通らない。国民民主へ秋波を送るのも仕方ない」と諦め顔だ。「はっきり約束したのだから総理には総理なりの財源確保の秘策があると信じたい」と祈るようだった。