浅尾慶一郎環境相(参院神奈川選挙区)は10日の閣議後会見で、バイデン米大統領が日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収に中止命令を出したことに関し、鉄鋼業界の脱炭素化に支障が出かねないとして懸念を示した。「国家安全保障上の懸念を理由に買収中止の判断がされたことは極めて残念だ」と述べた。
鉄鋼業は温室効果ガスの主要な排出源に挙げられ、排出削減が難しい産業の一つとされている。日本製鉄は世界に先駆けて、高炉での鉄鉱石の還元を石炭の代わりに水素を用いる脱炭素技術の確立を進めている。同社によるUSスチールの買収は、脱炭素化の革新技術の開発で協働することが戦略的意義の一つとしていた。
浅尾氏は「脱炭素技術を社会実装していくことが世界の脱炭素とわが国の経済成長の同時実現につながる重要な取り組みだ」と説明。「(製造時に温室効果ガス排出が少ない鉄である)グリーンスチールの市場創造を通じてわが国の鉄鋼業の脱炭素化を後押ししたい」と述べ、脱炭素と経済成長の両立に意欲を示した。