日本初の女性弁護士で、昨年放映されたNHK連続テレビ小説「虎に翼」の主人公のモデル三淵嘉子(1914~1984年)が過ごした別荘「三淵邸・甘柑(かんかん)荘」(神奈川県小田原市板橋)が人気となっている。もとは半世紀以上住む人がいない建物だったが、子孫らが保存活動を展開して昨年4月から一般公開したところ、同年末までに約8千人が訪れる“朝ドラの聖地”になった。
甘柑荘は初代最高裁長官の三淵忠彦(1880~1950年)が、36年ごろに建てた数寄屋風の木造平屋家屋。忠彦の意向で玄関と床の間をなくす一方、竹としっくいを使った天井など、簡素でありながら手の込んだ建物として評価されている。
嘉子は56年に忠彦の長男乾太郎と再婚。夫婦がそれぞれ裁判官として赴任先で単身生活を送る中、甘柑荘が休日の集合場所となり、家族の絆を強める場所となったという。
居室では嘉子が日本初の女性弁護士になるまでの歩みを写真を交えて紹介。男女平等を目指し奮闘した足跡や、おしゃれ好きだった嘉子のファッションが分かるコーナーもある。ドラマでも扱われた原爆裁判や尊属殺人に関する実際の新聞記事も展示され、司法の歴史を学べる場にもなっている。
ドラマで主人公を演じた俳優の伊藤沙莉さんのサインが掲示され、主人公が社会の理不尽に直面した際、口にする「はて?」の口癖をテーマに意見を募ったコーナーも設置。「差別がなくならない」「ハラスメントを認めぬ会社」などと訪れた人からの思いが寄せられている。
公開当初から1日に100人ほどが訪れる人気だったが、放映が終了するとさらに盛り上がった。ドラマを名残惜しむ“虎に翼ロス”が広がった昨年10月には1日に250人が訪れ、入館に30分待ちの列ができたという。