50年にわたり地元で愛されてきた総合スーパー、イトーヨーカドー藤沢店(藤沢市鵠沼石上)が13日夜、閉店した。シャッターが下りる瞬間には数百人以上の常連客らが店舗前に詰めかけ、感謝の言葉をかけ、いたわった。
イトーヨーカドー藤沢店は1974年6月、従業員数250人が働く総合スーパーとしてオープンした。当時、藤沢駅周辺では百貨店やスーパーが相次いで開業し、市民から「商業戦争」と称されるほど激しいサービス・価格競争が起きていた。同店の閉店に市民からは「藤沢の商業戦争の終わりを印象付ける出来事だ」との声が上がっていた。
同店があった同駅南口周辺には、73年に百貨店の十字屋、74年に志沢、江ノ電百貨店などが相次いで開業し、同駅北口周辺にも74年にさいか屋が売り場面積を増床、ダイエーが進出するなどしていた。地元商店街や既存の名店ビル、ダイヤモンドビルなどを巻き込んだ競争が起き、地域ににぎわいを創出していた。
しかし、近年は藤沢市内外で郊外型のショッピングモールなどの商業施設が多数開発されたこともあり、同駅周辺の商業のニーズが減少。代わりに市内では江の島などへの観光客向けのホテルや移住希望者向けのマンション、民間企業のオフィスへのニーズが高まっており、需要の変化の波が押し寄せている。
イトーヨーカドー藤沢店の5日前に開業し、長年「ライバル」関係にあったダイエー藤沢店は、2011年に6階建てから2階建てに建物の規模を縮小し、商品を絞るなどして生き残りを図っている。
ダイエー出店に携わった元藤沢商工会議所会頭の田中正明さん(82)はイトーヨーカドーの閉店について「長年藤沢の発展に貢献されただけに残念だ。市民の食卓や生活を支えることが商業には欠かせない。今後の展開を注視したい」と惜しんでいた。