東日本大震災で被災した宮城県石巻市立雄勝中学校の生徒たちが復興を祈り、古タイヤを使って始まった「復興輪太鼓」。当時の雄勝中校長だった佐藤淳一さん(64)らを招き、教職を目指す鎌倉女子大学(同市大船)の学生らが25日、輪太鼓を再現する演奏会を市内で開いた。家族や故郷を失った絶望から生徒たちを救った輪太鼓を通じ、佐藤さんは教員の卵に「防災教育とは教員が実際に被災地に立ち、支え合う気持ちを伝えること」と訴えた。
2011年3月、卒業式を終えた雄勝中を激しい揺れが襲い、押し寄せる津波が学び舎(や)を飲み込み、故郷は壊滅した。生徒77人は全員無事だったが、多くの生徒が家族を亡くした。
「生きている意味が分からなくなった」。生徒たちの作文につづられた深い絶望に佐藤さんの心をえぐられた。支援の手は全国から届くが、全てを失った子どもたちは返すものがない。「あまりに不憫(ふびん)すぎる。この子たちの自信と誇りを取り戻したい」。震災前から太鼓を授業で練習していたことから生徒たちに「太鼓をやろう」と持ちかけた。
古タイヤに梱包(こんぽう)用のビニールテープを貼って、身の回りにあるものだけで手作りし「復興輪太鼓」と命名した。地元で初演し、同じ被災者を励まし、その後は東京駅やドイツでも公演するなど“恩返し”を果たした。