絵本「だるまちゃんとてんぐちゃん」などで知られ、2018年に亡くなった絵本作家かこさとしさん(享年92)の戦争をテーマした未発表作品が今月、出版された。70年以上前に書かれた原稿を基に、かこさんの孫・中島加名(かめい)さん(31)が絵を担当。今年、戦後80年の節目を迎え、中島さんは「戦争で家族を失った子どもたちに、希望を与えたいという願いが込められている」と話し、平和について考える機会なればと期待している。
5日に出版された「くらげのパポちゃん」(講談社)は、かこさんの平和への思いを受け継ごうと作られた。戦争で死別した父子の思いをつなげようと奮闘するミズクラゲの主人公「パポちゃん」の心温まる冒険物語となっている。
1926年、福井県に生まれたかこさんは、東大工学部を卒業後、昭和電工(現レゾナック)に入社し、川崎市幸区に移住。同社の研究所に勤務しながら、労働者の子どもを支援する「セツルメント活動」として紙芝居を作っていた。今回の絵本の原稿は、同活動に携わった50~51年に書かれたものと見られる。2021年にかこさんの長女・鈴木万里さん(67)が藤沢市の自宅で発見。23年にテレビニュースとなり、講談社の編集者が絵本としての出版を提案した。