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「熊本の公務員ランナー」家族を亡くした豪雨から4年 今も球磨村復興のため奔走

KKT熊本県民テレビ 2024年7月5日 20時50分

「公務員ランナー」として熊本県内で一躍有名になった地下翔太さん(36)。熊本豪雨で大きな被害を受けた球磨村の出身で、豪雨当時は村職員として働いていました。豪雨から4年、家族を亡くしながらもふるさとの復興のため奔走する姿を追いました。

地下翔太さんは熊本城マラソンで連覇

7月2日、球磨村の渡地区。朝から走っていたのは、球磨村に住む地下翔太さんです。

■走る地下翔太さん

「なんか久しぶりに晴れている気がしますね」

球磨村役場の職員だった2012年、第1回熊本城マラソンで優勝を果たすと、翌年の第2回大会で連覇を達成。熊本一有名な公務員ランナーとなりました。

地下翔太さん(2020年7月)

しかし4年前。地元の球磨村を豪雨が襲いました。役場の職員として対応に追われる中、地下さんの自宅も2階まで水が押し寄せました。さらに。

■地下翔太さん(2020年7月)

Q.県の「死亡者リスト」の中に「末行さん」と…。

「ああ、そうですね、私の祖父になります」

特別養護老人ホーム千寿園(球磨村)

村にある特別養護老人ホーム千寿園に入所していた祖父の末行さん(当時91)が押し寄せた水から逃げ遅れ、亡くなったのです。

■地下翔太さん(2020年7月)

「避難所にいる時は、けっこう自分の仕事もあるし、バタバタしているのでそんなに考えることはないんですけど、避難所を離れた時にはいろいろ考えたりもするので…そうですね、大変なことになったなあという気はしてますね」

熊本豪雨の後2人の子どもが誕生

地下さんは、家族や家を失いながら村のために奔走してきました。あれから4年、取り巻く環境には変化がありました。

■地下翔太さん

「小学校の子どもたちを見送って、僕は下の子どもたちをこうやって送って、朝から出勤の時にはこのまま仕事に行きます。まあ大体、この流れは日課ですね」

熊本豪雨の後、2人が生まれ、子どもは4人になりました。子育て世代として、ある思いが芽生えました。

地下翔太さん

■地下翔太さん

「自分の中ではもっと何か自分にできること、本当に何かやれないかというのは考えるようになった。今からやっぱり子どもたちも大きくなっていきますし、まずは子どもたちが球磨村に残ってよかったって思ってもらえるような環境にしてあげたい」

地下さんは去年、13年務めた球磨村役場を退職

地下さんは去年、13年務めた球磨村役場を退職しました。再出発の場所に選んだのは、キャンプ場や温泉宿を構える「一勝地温泉かわせみ」です。「一勝地温泉かわせみ」は豪雨の被害やコロナ禍で営業を縮小していましたが、去年9月にリニューアルオープン。地元の憩いの場の再建に地下さんも携わりました。

一勝地温泉かわせみ(球磨村)

■地下翔太さん

「少しずつ、お客さんにいろんなところから来ていただいて、球磨村を知っていただきたいというのが一番思いがある」

配膳する地下翔太さん

転職して1年あまり。この日は宴会の準備に追われていました。

■地下翔太さん

「お昼の宴会をしていただくところって、だいたい球磨村ではない団体の方が多いので、かわせみがオープンして、こういった宴会とか食事提供できるよとか、 そういうのが徐々に認知されて きているのかなというのを感じますね」

食事や飲み物を配膳し、客を出迎えます。

(客を案内)

「トイレはこちらにもございますよ!お手洗いはこちらです!」

バス送迎も担当

宴会が終わった後は、自らバスを運転し客を送り届けます。

一勝地温泉かわせみ 糸原樹哉支配人

■一勝地温泉かわせみ 糸原樹哉支配人

「本当に地下さんが欠けると回らないくらい、かなり大きい存在ですね。そのくらい本当に一生懸命働いていただいているので、本当に助かります」

今も毎朝1時間のランニング

地元のため、家族のため、多忙な日々が続く地下さん。それでも、「走ることの楽しさ」は忘れていません。

■地下翔太さん

Q走るのは大会とかなくてもお好きですか?

「そうですね、災害がきっかけで走ることに対しての気持ちがすごく変わったなと思います。今までは本当に練習をして、大会出て結果を出すみたいなスタンスでしたが、今はもう本当に走れてるだけでいいなみたいな、走ること自体を楽しめるようになったといいますか、そういうのありますよね」

大会への出場は減りましたが、出勤前の1時間のランニングは毎日欠かしません。

地下翔太さん

■地下翔太さん

Q何歳まで走りますか?

「何歳ぐらいまで走るんでしょうね。 でもなんかもうライフワークみたいになってきているので、そんなに終わりは決めてないですね。 もう精一杯走れるまで、体が元気なうちはタイム的なところもそうですけど、しっかりやっていきたいなと思います」

ランニングする地下翔太さん

突然襲った豪雨から4年。ランナーとして、復興を願うひとりの村民として、地下さんは走り続けます。

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