記者やアナウンサーが取材した1つのテーマを深掘りする「記者のコトバ」。今回のテーマは「いじめは予防できる?」です。「いじめの予防」とは、どういうことでしょうか?
(畑中香保里キャスター)
熊本市の小学校で、いじめを防ぐ方法を考える授業が行われました。どうすれば防ぐことができるのか。そのヒントとなったのが、このカードを使ったゲームです。
11月15日、熊本市南区の富合小学校で行われていた6年生の授業。
■すなばコーポレーション 門川良平代表
「学校などでいじめや嫌がらせなどが少ない、良いクラスを作っていくためのカードゲームです」
教壇に立っていたのは、ゲームを使った教材を開発している門川良平さんです。熊本市が今回、カードゲームの制作を依頼しました。その狙いは、子どもたちに「いじめを予防する行動」を考えてもらうことでした。
(緒方太郎キャスター)
ゲームを通して、いじめについて考えるというのは新鮮なアイデアですね。どんなゲームなんですか?
(畑中キャスター)
ゲームの題材を紹介します。いじめについて、4つの段階があります。
①クラスの中で少し目立つ行動をしたAさんに対し、Bさんが『Aさんってなんか変だよね』と言って、からかいました。
②次の段階でBさんのからかいがエスカレートしていきます。Cさんは見守ることしかできないでいます。
③さらに段階が進むと、何人かでAさんを笑いものにする場面が増え、Aさんは困った表情です。
④状況はどんどん悪化し、みんなでAさんを仲間はずれにするいじめに発展してしまいました。
*この①から④の段階は、この後の授業のシーンでも出てきます。
(緒方キャスター)
どんどんエスカレートしてしまいました。このいじめをどう予防するんですか?
(畑中キャスター)
そこで登場するのが、このカードです。再び授業の様子です。
ゲームで使うのは、9枚のカードです。「いじめられたAさんがおうちの人に伝える」、「そばで見ていたCさんがBさんに『やりすぎじゃない?』という」などの選択肢が書かれています。いじめの4つの段階のどこで、選択肢が書かれた9枚のカードのどれを使ったらいいのか考えます。
■すなばコーポレーション 門川良平代表
「時間をさかのぼり、どのタイミングでどういう行動をとっていれば、④の段階の(いじめの)未来を変えられるか、グループで考えます」
難しい判断を迫られた子どもたち。どうすればいじめに発展する前にBさんの行為を止められるか、カードを使って考えます。
■児童
「②の段階のところで、Cさん(傍観者)が、先生に『BさんがAさんにこんなことをした』と言う。③の段階と迷ったんですけど、②の段階で早く終わらせた方がまわりの人もこんなことを思うようになる前に3人で終らせられるから」
早めに先生に伝える方法を選びました。
■児童
「いちから考えるのではなくカードから考えるのが楽しかった」
■児童
「加害者にならず、いじめを止められる人になりたいです」
門川さんは、いじめを防ぐために自分たちにもできることがあると考えてほしいと話します。
■すなばコーポレーション 門川良平代表
「いい意味で結論が出ず、迷ってしまう瞬間をたくさん見せてくれた。そういう思考ができるようになってくれば、いじめ予防していけるクラスに なっていけるのかなと思います」
(畑中キャスター)
カードに書かれているのは、門川さんと研究グループが、“やはた行動”と名付けたいじめ予防の選択肢です。
(緒方キャスター)
具体的にはどんな行動ですか?
(畑中キャスター)
「やはた行動」は、「やめてと言う」、「その場をはなれる」、「たすけを呼ぶ」の3つの文字を取った言葉です。
「や」は、「やめて」という言葉や、「やめなよ」と止める行動も含まれます。
「は」は、「その場を離れる」、または第三者が「離してあげる」ということです。
「た」は、「助けを呼ぶ」、親や先生など第三者に伝える行動です。
いじめに発展する前の早い段階で行うことがポイントです。
(緒方キャスター)
大人のハラスメント対策に共通することもありそうですね。
(畑中キャスター)
門川さんがもうひとつ伝えていたのが、「シンキングエラー」という言葉です。
「相手が嫌ががっていないから、やってもいい」という相手の感情の過小評価や、「他の人もやっているから自分もやっていい」という同調圧力などを指すそうです。
(緒方キャスター)
文字やイラストで視覚化することで、対策をイメージすることが大切ですね。
(畑中キャスター)
今回紹介したカードゲームは来年度以降、学校の授業や子ども会での活用が検討されています。
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