地域の足として親しまれる熊本市電は、これまで運転士の人手不足が課題となっていて、「過去最大規模」という減便も行われました。熊本市交通局は人手不足対策として「1人約100万円の給与引き上げ」を打ち出しました。処遇改善で、運転士不足を補えるでしょうか?
熊本市電は今年6月、平日の運行本数を最大15%削減するなど「過去最大規模の減便」を実施しました。背景にあったのは「深刻な運転士不足」でした。
運転士のほとんどが非正規の会計年度任用職員で、厳しい労働環境などにより退職者が相次ぐなど、運転士の確保とともに処遇の改善が喫緊の課題となっていました。
こうした状況に熊本市交通局は、3日の市議会で具体的な一手を示しました。
■熊本市交通局 井芹和哉交通事業管理者
「給料表の拡充や扶養手当住居手当の支給についても検討しており、当初予定しておりました公社による正規化と同程度の給与水準となるよう改善していきたい」
熊本市では、経営改善を目指し市が出資する公社が運行などを担い、線路などの管理を市が行う「上下分離方式」を来年4月に導入し、運転士の正規職員化を目指していましたが、相次ぐ市電のトラブルを受けて導入の延期を決定しました。
このため、運転士の処遇の改善を先行して行う方針を明らかにしたのです。それによりますと、運転士の平均年収は昨年度の384万円から480万円ほどと、約100万円引き上げ、正規職員とほぼ同じ水準となるということです。
■熊本市 大西一史市長
「人の命を預かる極めて重い責任を持った立場でもありますから、相当するきちんとした待遇をしていくのは必要」
熊本市交通局は関連する条例の改正を目指します。
【スタジオ】
(畑中香保里キャスター)
「会計年度任用職員」というのは、原則として1年以内かつ年度ごとの任用ですから、将来に不安を感じるのも仕方ないですよね。
(緒方太郎キャスター)
そこで今回、待遇を上げて運転士不足を解消する一手を打ったわけです。現在は平均年収約384万円で、手当は期末手当のみです。それを約100万円引き上げて480万円とする方針で、勤勉手当・住居手当・扶養手当をつけるとしています。
一方で、まずは待遇の改善が最優先だとして、正規職員化の議論は延期となっています。人手の確保は、業務に余裕が生まれ、相次ぐトラブルを防ぐことにもつながります。どのような効果をもたらすのか、注目です。
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