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「復興待ったなし」の気概で四股を踏み… 台風10号影響で無念の中止 伏木場所大相撲 

KNB北日本放送 2024年9月4日 19時34分

エヴリィでは2024年5月、能登半島地震で被災した高岡市の伏木地区を伝統の相撲で元気づけようと奮闘する男性を紹介しました。

9月1日には恒例の相撲大会が予定されていましたが、再び自然の猛威にさらされました。

それでも前を向き歩みを進める男性を羽柴カメラマンが取材しました。

「過去最強クラス」の台風10号が九州に近づいていた8月28日。伏木国技館と名付けられた倉庫に住民たちが集まっていました。

みな浮かない表情です。

高橋正剛伏木相撲愛好会 会長

「皆さんご承知の通りかつてない程の強力な台風が来ると。私としては相撲大会は中止にしたい」

議題は4日後に迫った相撲大会を開催するかどうかについて。

今から34年前に始まった伏木場所大相撲。

中学生以上による幕内や小学生の十両、赤ちゃんが参加する泣き相撲など様々な部門があり、年代や性別を超えて毎年200人以上の住民が参加する、地域ぐるみの一大イベントです。

主催する伏木相撲愛好会のメンバーにとっては、日頃の鍛錬の成果を披露する年に一度の大切な機会ですが…

國守こと國谷伸五さん

「準備、当日、後片付けまで全部ダメですね」

龍鵬こと木谷正寿さん

「無理やな」

かち勝山こと高尾渓詩さん

「不可能というかやるべきではない」

桶ノ谷こと桶谷知生さん

「きのうまでは強行できるんじゃないかと思っとったがです、きのうまでは。さすがに警報の中でやったら…」

伏木相撲では最高位となる大関の桶ノ谷こと桶谷知生(38)さんです。

桶谷さん

「いくら腕っぷし強くても自然ばっかりは相手できないですからね。いやあやりたかったすね…」

桶谷さんにはどうしても大会を開きたい理由がありました。

3/9取材 桶谷さん

「いやあ、見た瞬間ぼう然としましたね、あー沈んどると思って(苦笑)」

1月1日の能登半島地震。

伏木では液状化によって道路や家屋に被害が相次ぎました。

地区の中心部にある桶谷さんの自宅も地盤が大きく傾いて「大規模半壊」と判定されました。

桶谷さん

「ここはもともと水平やったがです。それがここまで落ちてしまって」

2023年8月に結婚したばかりでしたが、今も互いの実家で離ればなれの生活を余儀なくされています。

被災後、心の支えになったのが 7年前に始めた伏木相撲でした。

地震の影響で例年より1か月遅れとなった初稽古では、仲間と息が上がるまで体をぶつけ合いました。

高橋正剛会長

「全く被害ない人はおらんと思う、私の家は瓦ずれたりとか、家に10か所以上ヒビが入ってる」

桶谷さんは相撲で被災地に元気を届けたいと考えました。

桶谷さん

「人が元気なの見るとこっちも気持ちが上にむいたりだとか、少なからずあると思うので…景気づけに相撲取りませんかと提案したら賛成多数で」

2024年5月、桶谷さんの発案で開かれた復興祈願の相撲巡業。

地元力士による取組やちゃんこ鍋の炊き出しなどが行われ、訪れた被災住民らが楽しいひとときを過ごしました。

「皆さん元気な顔で集まるのは大変結構なことじゃないかと思う」

「家におったら精神的におかしなります、元気もらえます」

人をつなぐ助け合いの輪。9月の本場所ではその輪はもっと大きくなるはずでした。

台風の接近にともない無念の中止となった伏木場所。

誰もいないはずの土俵に…桶谷さんの姿が。

雨が小降りになったことから仲間たちと自主稽古に訪れました。

土俵に足を踏み下ろす四股は、地中の邪気を払い大地を鎮めるといわれています。

桶谷さん

「災害とかないようにと思いながら、大地を清められたらと思って踏みました、大層なこと言いますけど(笑)」

街を元気に。気持ちは早くも来年の本場所に向かっています。

桶谷さん

「なるべく元気な姿を見せて、それが相撲で伝わるか分かりませんけど、小さい事からひとつずつやっていけばいいんではないかと思ってます」

待ったなし。自然災害に翻弄されながらも土俵際で踏ん張る住民の姿がありました。

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