能登半島地震による海底地滑りなどの影響を受け、富山湾に生息するシロエビは記録的な不漁となっています。シロエビを加工販売する業者の悩みと、新たに始めた取り組みを、岡川記者がリポートします。
棚辺水産 棚辺芳彦社長「激減ですね。(例年の)1~2割しかないですね、シロエビの売り上げは。もう何十年もやってますけど初めてですね」
射水市新湊地域で水産加工の会社を営む、棚辺芳彦さんです。
すぐそばの新湊漁港で水揚げされるシロエビの記録的な不漁が、経営を直撃しています。4月の漁解禁から不漁が続き、一時的に回復する時期はあったものの、先月の漁獲量は11トンで、去年の半分ほどにまで落ち込みました。
品薄により、シロエビの浜値は一時、例年の4倍ほどに跳ね上がりました。
棚辺さんの会社では長年、シロエビの商品が売り上げを支えてきましたが。
棚辺水産 棚辺芳彦社長「だいたい去年の2倍ぐらいの価格になっております。三十数社取引先がありましたけど、高すぎて売れない状況ですね。おすし屋さんでさえ『要らない』と言う状況」
そして、今後についても心配しています。シロエビ漁は来月末に終了し、資源保護のための禁漁期間に入るため、調達ができなくなります。
去年までは、漁の期間中に仕入れておいたシロエビを冷凍保存することで、一年を通して販売することができました。しかし、今年は漁獲量が少ないためそれが難しいといいます。
シロエビの不漁は会社の雇用にも影響を与えています。殻をむく従業員は、去年まで8人前後がほぼフル稼働していましたが、今年はたった3人に。1日の作業時間も半分に減りました。
棚辺水産 パート従業員「私、週4(日勤務)だったのが週3(日)になり(勤務)時間も減ったので、余った時間でバイト掛け持ちでもしようかなと思ったんですけど、なかなか難しくて。(中学生の)子どももいるので、午後から子どものことをしなきゃいけないとなると、ここ終わって、また他のところで働くのは難しいかなって感じですね。毎日、1日1日(の生活)を考えとるって感じやね」
棚辺さんは助成金を活用しながら、従業員の働く環境を守ろうと努めてきました。
また、シロエビに頼らない新商品の開発にも着手しました。
棚辺水産 棚辺芳彦社長「サクラマスの、のっけて丼という形で販売しております。養殖なので、原料が安定して提供できるものがやっぱり商売に向くんじゃないかと」
市内で養殖されている「いみずサクラマス」の刺身を使った商品です。射水市の道の駅でも、今年7月に販売が始まりました。
新湊食堂 宮本由里枝チーフ「シロエビが不漁ということで、地震もあって、射水の発展にという考えで(始めた)。県外の方、あと地元の方も味わってもらいたい」
棚辺さんの会社では、県外のアンテナショップや物産展にも、サクラマスを使った商品を出荷しているほか、海外での販売も検討しています。
棚辺水産 棚辺芳彦社長「事業努力で新しい商品を開発して、販路を探して…もう営業努力で(売り上げを)回復するしかないですね」
県水産研究所は、富山湾のシロエビの数が回復するには数年単位の時間がかかるとみています。シロエビの漁業者や加工業者は今後も厳しい状況が続きます。
富山のお土産の定番となっているシロエビのせんべいやかきもちも、不漁やコメの価格高騰によって値上げする業者が増えています。
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