生活保護のあり方について様々な人が意見を交わすシンポジウムが先月開かれました。
スタジオには、このシンポジウムに参加した吉田記者です。
生活保護は、憲法25条の生存権の理念のもとに生まれた制度です。
しかし生活保護をめぐっては、行政が窓口で申請を断るいわゆる「水際作戦」が相次ぐほか、受給者への誹謗中傷など様々な問題があります。
誰もが守られる制度になるよう意見が交わされたシンポジウムに、私もパネリストとして参加しました。
「生活保障法」の制定を目指して議論
先月、名古屋市で開かれた日本弁護士連合会のシンポジウム。
生活保護をめぐる様々な問題について、当事者や弁護士が意見を交わしました。
自動車保有を理由に保護停止された女性「当初から自動車の保有を認めてくれない雰囲気で、クエスチョンマークです」
外国人生活保護訴訟 原告男性「病気になったり、けがをしたり、働けなくなったら、生活保護を認めてください」
日弁連は、現行の「生活保護法」よりもさらに権利を明確化した「生活保障法」の制定を目指して議論を進めています。
KNBは、今年3月に、生活保護の問題と向き合い、生きる権利を求める当事者の姿を追った番組「半透明のわたし生きる権利と生活保護」を放送しました。
私は、この番組の制作者としてシンポジウムで登壇しました。
吉田 「受給していない人に生活保護について聞くと、『受給は恥ずかしい』『受けるくらいなら死ぬ』などと答える方も見受けられました。個人の尊厳や生存権を、ひとりでも多くの人に自分事として考えてほしいと思い、この番組を制作しました」
取材する中で多く聞かれた生活保護への偏見。
この日、参加した専門家からも問題点として指摘する声があがりました。
作家 雨宮処凛さん 「やっぱり偏見が大きいですよね日本は。入りにくくて出にくい。本当にいろんなものを失わないと生活保護の利用に至らないので…」
誰もが必要な時に利用できる制度を
シンポジウムに富山から参加したのが3月の番組でも密着した西山貞義弁護士です。
西山弁護士は今年、生活保障の先進国ドイツやスウェーデンを訪ねて現地調査を行いました。
西山弁護士 「ドイツにおいては、司法権が憲法を根拠に『生存最低限度保障は人間の尊厳に直結する極めて重要な権利である』と宣言しました。日本においても我々司法が憲法を根拠として、立法や行政をリード、統制していく必要があります」
「当然の権利」として、誰もが必要な時に利用できる制度を目指して。
西山弁護士「生活保護受給は誰にでも起こりうる話なんですね。経済的な問題でやりたいことができない社会は絶対によくない。そういう社会を変えていきたいと思うので、皆がやりたいことをやれるような社会にするための生活保護ということになると思う」
生活保護費引き下げめぐり全国各地で裁判
ひと言に生活保護と言っても様々な問題があります。
富山では生活保護をめぐる裁判も起こされていますが、現在はどのような状況でしょうか。
国が行った生活保護費の大幅な引き下げを取り消すよう富山市の男性らが訴えた裁判は、富山地裁が今年1月に、「引き下げを取り消す」原告勝訴の判決を言い渡しました。
その後、被告の富山市と原告が控訴して開かれている控訴審は、来年2月の次回で結審し判決に向かうことになります。
全国でも同様の裁判が続いていて今後、最高裁がどのような判断を下すかもポイントとなります。
誰もが生きる権利を守られる社会に向けた取り組みの取材を続けたいと思います。
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