中東の高級ホテルに先月オープンした和食レストラン。
目を引くのが客を出迎える巨大なしめ縄。
手がけたのは射水市の会社で、富山の「ものづくり」の発信に一役買っています。
「せーの、1、2…」
しめ縄の製造・販売を行う射水市の縄合屋です。
しめ縄を作っておよそ50年、これまで、およそ7000本を国内の神社に納めてきました。
この縄合屋に、およそ1年前海外から製作依頼が入りました。
発注されたのは直径70センチ、長さおよそ7メートル、重さは830キロにも及ぶ巨大なしめ縄で、これまで手掛けたことのない大きさでした。
◆縄合屋 髙野英明取締役
「まずは不安、できるかどうかっていうところでしたかね。ただまあ、やってみたいっていう好奇心のほうが大きかったので」
縄合屋では主に3本の縄をより合わせてしめ縄を作っていますが、今回は出雲大社をイメージし2本の縄で作りました。
縄があまりに大きく、製作に必要な人手が職人だけでは足りないため漁網を作っているつながりから水橋地区の漁師にも協力を依頼しました。
「より合わせる作業も3本であれば詰まったしめ縄の山ができるんですけども、2本の場合はちょっと間延びしてしまう形になってしまうことがありました。もう一度作り直して、またより合わせて、その一度目の失敗を2度目の成功につなげたっていうところが大きかったと思います」
しめ縄は、今年4月から2か月半かかり完成しました。
納入先は富山から遠く離れたアラブ首長国連邦の首都・アブダビ。
船でおよそ1カ月かけて運ばれたしめ縄は高級ホテルに先月オープンした、和食レストランの個室にオブジェとして飾られました。
個室の名前は、「Toyama」。
イギリス在住のオーナーシェフ、ロス・ショーンハンさんは、去年11月、県がロンドンで行ったPRキャンペーンで縄合屋のことを知ったと言います。
レストランのコンセプトは「わら焼き」で調理の際に火が高く上がるため、火事になる可能性を考慮し、しめ縄を合成繊維で製作できる点にも注目しました。
◆Strawfire オーナーシェフ ロス・ショーンハンさん
「実際に部屋に入り、自分の目で見たとき、すばらしいと思いました。私たちは、全てのお客さんがレストランを出るときに、「Toyama」ルームを見せることを大切にしています。チーム全員がとても誇りに思っているからです。そして、みなさんがその部屋に入ると言うのは「Wow!」と「写真を撮って良いですか」の2つです。私はいつも、自分が手がける様々なレストランで日本の物語を伝えたいと考えています。西洋の人たちに日本には、すしや相撲だけでなく、もっと多くのものがあることを知ってもらう手助けをしたいと思っています」
店内では、富山をイメージした風景が個室の壁に描かれているほか、高岡市の鋳物メーカーの器で酒を提供しています。
今後は、高岡市の菅笠をスタッフが着用する予定で、富山の製品が随所に用いられています。
◆ショーンハンさん
「現代の世界でのひとつの問題として、世代やコミュニティーを通じて受け継がれてきた職人技や技術が脅かされていると思います。そうした文化が今もまだ生きていることはいいことですし、続いていくことを願っています」
◆縄合屋 髙野英明取締役
「海外からそして日本全国からも富山にもっと足を運んでいただけるようなそういうふうになればいいなと思います」
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