今年3月、富山市でピアノ講師の女性が飲酒運転の車にはねられ亡くなりました。
運転手は自動車運転処罰法違反の過失運転致死の疑いなどで書類送検されましたが、女性の遺族は納得できないとしてより法定刑の重い危険運転の適用を訴えています。
長谷川記者の取材です。
中田康介さん「本当に僕は今でも亡くなった時の顔を思い出しますし、あんな酷い目に遭わせた加害者を許すことはできないですね」
最愛の母が犠牲となった事故現場を見つめこう話すのは中田康介さんです。
事故が起きたのは今年3月21日の未明。
富山市総曲輪で飲酒運転の車が一方通行の道路を逆走して交差点に侵入し道路を横断していた中田さんの母・井野真寿美さん(当時62)をはねました。
井野さんはその後、搬送先の病院で帰らぬ人となりました。
中田康介さん「みぞれがその時降っていたというので本当に寒かったと思いますし、痛かったと思いますし、苦しかったと思いますし、もうそのことを想像するだけでも、もう本当に苦しいです」
生前は「Taji」の名前で音楽活動に力を入れていたという井野さん。
ピアノ講師として子どもたちの指導にもあたっていました。
ピアノ教室のあった総曲輪のビルの一角には今も思い出が残されています。
中田康介さん「これはもう母親の楽譜が大方になってますね 例えば母親もリクエストされたりとかこんな曲弾いてほしいとかこんなの歌ってほしいって言われたらすぐ弾けるようにとか」「本当にピアノ弾いて歌っている時はもう自分の思ったことだったりとか楽しいっていう感情をありのままに表現する人でしたし、音楽と一緒になるというか本当に入り込むみたいな人でした」
中田さんは母と過ごした在りし日のことを思い出すと話します。
中田康介さん「今でも後ろでピアノを弾いて、顔を見合わせてっていうのがたまに思い浮かびますし、もっと一緒に時間を共有したかったなと」
中田さんは車を運転していた男性と会い飲酒運転の理由について問い質しました。
男性は「代行がつかまらなかった」などと説明したといいます。
事故から3か月後、県警は車を運転していた男性を酒気帯び運転と自動車運転処罰法違反の過失運転致死の容疑で書類送検しました。
しかし、中田さんは納得できなかったと話します。
中田康介さん「私たち遺族の苦しみだったり消えない思い、時間っていうものを考えると最大7年っていうところで果たして許されるべきことなのかというのはすごく思います」
中田さんら遺族はより刑罰の重い危険運転致死罪を適用すべきと考えています。
危険運転致死傷罪をめぐっては、これまで法定速度を大幅に超えた速度での運転や、飲酒運転などでの死傷事故でも適用のハードルが高いとの声があり、法改正に向けた議論が進んでいます。
中田さんは、危険運転の適用を訴えようと、先月から妹のすみれさんとともに街頭での署名活動を始めました。
今月5日にオンラインでも署名を募るときょうまでに3万7000人あまりの賛同が集まっています。
広瀬すみれさん「飲酒運転は単なる不注意じゃないと、わざと飲酒をして車に乗るという極めて危険で異常な行為だってことを訴えて、そこに向けた更なる捜査をしていただきたいという気持ち、強い気持ちで署名活動を始めました」
2人は来月をめどに集めた署名を富山地検に提出する考えです。
中田康介さん「こういった私たちの苦しみというかですね悲しみってものを多くの方に知っていただいて、母親の死を無駄にしないためにも訴え続けていきたいなと思います」
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