今週、エブリイでは今年1年の出来事をシリーズで振り返ります。1回目のきょうは、能登半島地震で液状化など大きな被害を受けた氷見市の公費解体をめぐるこの1年です。
武道キャスター「こんにちは」姿さん「はいどうぞ」
氷見市北大町に住む姿 和男さん(73)は、能登半島地震で被災して傾いた自宅の一間でひとり、暮らしてきました。
武道「生活は、ほぼこの区間で」姿さん「この部屋だけ、なんとかしのげるから。あっちはもう、すきま風が入ってどうしようもない」
元日の午後4時10分、能登半島を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生しました。
清水記者「建物が倒壊し、大きく崩れています。1階部分がつぶれてしまったと思われます」
姿さんが住む氷見市では震度5強を観測。全壊・半壊ともに富山県内で最も多くの住宅被害が確認されました。
氷見市は、所有者に代わって住宅などを解体する公費解体を6月から始めました。
しかし今月、意見交換会で住民からあがったのは、公費解体の遅れを指摘する声です。
住民「私の感覚では非常に遅い、遅いんですけどスピードが」
市内では今月17日までに、公費解体への申請が442件ありましたが、完了したのは、住宅のほか、納屋などを含めた67棟にとどまっています。
姿さんも、液状化被害で全壊判定を受けた自宅の公費解体を希望していますが、いつ始まるのか市から連絡はなく、家財道具を片付ける気になれないと言います。
姿さん(亡き妻の写真を見ながら)「この写真ぐらいなら片づけられるんやけど」
妻は10年以上前に他界しました。同居していた娘夫婦は地震の後、家を離れましたが、姿さんは長年住み慣れた家を離れることができませんでした。
武道「寂しくないですか」姿さん「いや、まだこうやっている間は寂しい余裕がないよね。(家が)無くなったときやろね、多分」武道「その先の生活は」姿さん「今のところまだ白紙やね、全く」
被災した住民のなかには、氷見市を離れて公費解体を待っている人もいます。
小矢部市のアパートへ妻と息子と3人で移り住んだ田畑 一さん(76)です。自宅は液状化で全壊判定を受けました。
田畑さん「忘れるためかどうか知らんけど、アルコールの量だけ増えましたわ」
田畑さんは、次の住まいをどうするか迷っています。
現在住んでいるアパートは、氷見市が2年間、家賃を補助してくれる「みなし仮設住宅」です。
地震が発生した1月から入居している田畑さんの場合、1年後には補助期間が終了します。
市内に建設予定の災害公営住宅への入居を希望していますが、こちらの入居開始は再来年の秋以降と見込まれ、すぐに住み替えるのは難しい状況です。
市が、災害公営住宅への入居条件を満たす世帯に意向調査を行ったところ、最も多かったのは「まだ決められない」と回答した70世帯でした。
被災した家を修理して住むか、別の場所に移り住むか、家族の意見がまとまらないなど様々な理由で悩んでいるのです。
また、液状化対策についても、大規模な事業となることから具体的な工法は確定しておらず、住民たちは心配しています。
田畑さん「ここの人はずっと私の小さい頃からいるような人ばっかりですからね。みんな顔知っとるというか」武道「みんなと会って、もう一度前のような暮らしがしてみたいですか」田畑さん「もちろんそうしたいですね」
しかし、病気を患い、通院が欠かせない田畑さんにとっては、自宅の液状化対策を待つのも、新たに家を建てるのも考えづらいと言います。
あの日からもうすぐ1年が経とうとしていますが、先の見えない生活に、住民たちの不安は募るばかりです。
武道「また元日がやってきますけど」田畑さん「だから、思い出さんようにすればいいのじゃないかね」
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