国による生活保護費の基準額引き下げをめぐり、富山市に住む受給者らが国と市に減額処分の取り消しなどを求めた裁判の控訴審がきょう結審しました。判決は6月25日に言い渡されます。
この裁判は、2013年から15年にかけて国が生活保護費を最大10%引き下げたのは憲法25条の「生存権」に反するなどとして、富山市の受給者ら5人が市に対する処分の取り消しと国への賠償を求めたものです。
去年1月、一審の富山地裁は生活保護基準の引き下げについて、「厚生労働大臣の裁量権の範囲に逸脱や濫用がある」として減額処分の取り消しを認めた一方、国への賠償請求は退けました。
この判決を不服として、富山市と原告の双方が控訴していました。
去年7月から名古屋高等裁判所金沢支部で始まった控訴審で、被告の富山市側は、引き下げの適法性を主張してきた一方、原告側は、統計などの客観的な数値との合理的関連性や専門的知見との整合性がない違法な引き下げだと訴えてきました。
裁判はきょう結審し、6月25日に判決が言い渡されます。
【記者解説】控訴審の争点は
上野キャスター)スタジオには取材をしている吉田記者です。
改めて、控訴審の争点について教えてください。
吉田記者)裁判の大きな争点は、生活保護費の『基準額の引き下げ幅が厚生労働大臣の裁量の範囲を超えているかどうか』です。
富山市側は厚生労働大臣の広い裁量権を理由に引き下げは適法だと訴える一方、原告側は、国が算定した下落率に正当な理由はないなどとして違法と訴えています。
上)同様の裁判は全国でも続いていますね。
吉)全国29の都道府県で起こされていて、一審は原告勝訴が18件、敗訴が11件。
二審は、原告勝訴が2件、敗訴が3件と判断が分かれています。
直近では、先月29日に福岡高裁が「厚生労働大臣の判断に裁量権の逸脱や濫用がある」として、基準額の引き下げを取り消す判決を言い渡しました。
憲法25条・生存権のあり方を根本から問う裁判。6月の判決、そして今後の最高裁の判断にも注目が集まっています。
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