「かばんの中に入れておいた財布が、地下鉄に乗っている間に消えた」
韓国で3月26日と27日、こうした通報が警察に相次いで寄せられた。旅行で韓国を訪れた中国人観光客2人がそれぞれ被害を受けた。被害額は、韓国ウォンで55万ウォン相当で、どちらも50代A氏の犯行だった。
ソウル警察庁地下鉄警察隊捜査1チームのキム・ヒョンチョル警部補は、通報を受けて、まずは証拠の確保に努めた。現場となったのはソウル地下鉄3・4号線の車内。警察は、地下鉄駅舎や電車内部などに設置された防犯カメラを自由に確認する権限はなく、防犯カメラを見るためには地下鉄を運営する各機関に公文書を送って協力を依頼する必要がある。
ソウル地下鉄1・3・5号線が通る鍾路3街駅のように、さまざまな号線が入り混じっている駅の場合、号線ごとに別々の駅務室で防犯カメラを確保しなければならない。
100台余りを超える防犯カメラ映像を分析したところ、A氏は2~3時間にわたりさまざまな電車を乗り降りしながら、犯行に関与していた。電車に乗っても犯行対象が見つからなければ、直ちに降りていた。
通報から半月が過ぎた4月11日、A氏はソウル市江南区所在の競輪・競艇場で検挙された。A氏は窃盗の疑いで既に12回も拘束されるなど前科19犯で、現金をたくさん持ち歩く外国人観光客を主な犯行対象としていた。
捜査に当たったキム警部補は「オープン型カバンの場合、スリ犯行の対象になりやすい。バックパックの場合、地下鉄車内では体の前で抱えておくこと」などと忠告した。
キム警部補は全国に3人しかいない「酔っ払いを狙った窃盗犯」の専門捜査官の1人だ。こうした窃盗犯は、酔っ払った人を助けるふりをして近づき、ポケットに入っている物を盗むのだ。
専門捜査官の制度は、警察庁が2005年から導入した。キム警部補は2022年までに15人以上の窃盗犯を検挙した。
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