◇収益モデル
ゲームの主流がコンソールゲームからオンラインゲームに移る過程で、制作側を悩ませたもの――それが「収益モデルをどうするか」ということだ。オンラインゲームに限らず、「無料コンテンツが主流」とみなされてきたメディア産業の苦悩と通じるものがある。
テレビゲームがオンラインでつながるのがオンラインゲーム。この新たな方式がゲーム市場を大きく変えた。「オンラインゲームがなぜ普及したか? それは無料で遊べたから」。川口氏はこう振り返る。オンラインゲームの認知度を高め、家庭用ゲーム機を操作する手をPCに向かわせるためには、この「一定程度の無料化」はやむを得ない措置だった。
ただ、ここで芽生えた「ゲームは無料」という感覚は、その先に見込んでいた「有料化による収益」の大きな妨げとなるというのが、業界における半ば共通認識だった。
オンラインゲーム業界は収益化の第一歩として「広告・宣伝をいかに取り入れるか」ということを模索した。ともかくゲームユーザーの母数を大きくし、その中から数%でも有料でゲームをする人を見つけ出せないかというものだ。
こうして作り出された広告モデルは一時的には注目され、奏功した。だが、その盛り上がりは限定的だった。
最大の理由が「広告の表示があることでプレイに支障をきたす」というものだった。「ゲームのための快適な環境を構築できない」というクレームが相次いだのだ。
◇フリー・トゥ・プレイモデル
もともとオンラインゲームは、サブスクリプション(月額課金)モデルから始まった。だが作品数が増える一方で、売り上げは思うように伸びない。
そこで、ユーザー間の差別化を図る方法として韓国で考案されたのが「フリー・トゥ・プレイ(アイテム課金)モデル」。基本的にはゲームは無料だが、他のプレイヤーより強くなりたい場合にはお金を払えば武器や防具を購入でき、他者を圧倒する強力なパワーを得られるというものだ。
ゲームユーザーが切望すること――それはまさに「強くなる」ことだ。誰よりも優れたプレイをして、周囲に称賛されたい。何か賞を取りたい。場合によっては、自身の生業にしたい。「強くなる」手段を得られるという誘い文句がユーザーの心を揺さぶった。
フリー・トゥ・プレイを取り入れたオンラインゲームでも、ユーザーは自由にゲームにアクセスできる。ただし、キャラクターが強くなったり何かアイテムを購入しようとしたりする場合に制限がある。それを得るには少額決済を使用しなければならない――こんな仕組みが作られた。
この点を川口氏が解説する。
「無料モデルではなかなか強くなれない。例えば、あるレベルに達するまでに1週間かかるよう回り道をさせる。ところが課金した瞬間、1週間かかるものが1分で可能となる。この“一気に強くなる”というモデルがユーザーをひきつける」
このフリー・トゥ・プレイは2003年12月、日本でも始まり、その後、世界の各地に広まった。
一方で、この課金モデルはゲームの運営側にも工夫を求めている。「継続してプレイをしてもらう」ことが不可欠なためだ。コンソールゲームには終わりがある。人間とマシーンの対決であり、何度も同じようなプレイを繰り返すうち利用者は飽きてしまう。ユーザーを飽きさせないためにはゲームそのものを、時間とともに変化させ、ストーリーを終わらせないようにする必要がある。
幸い、オンラインゲームでは戦いがユーザー対ユーザーとなるため、「ゲームに接続するたびに異なる面白さを味わうことができる」という利点がある。
◇闇売買
オンラインゲームが発展するにつれ、韓国ではユーザーの「強くなりたい」という欲求に乗じたイレギュラーな取引が持ち上がってきた。
ゲームユーザーが「自分は退会する。だが、自分はこれだけの金をつぎ込んで、キャラはものすごく強くなった」と誇示しながら、彼らが使ってきたゲームのID・パスワードを売買するというものだ。
そのID・パスワードを買えば、いきなり強いキャラクターでゲームをプレイできる。例えば、ランク1だったのが、突然、ランク100になり、周囲から尊敬されるようになる。このID・パスワード売買は「RMT=リアルマネートレード」と呼ばれるものだ。
人気のオンラインゲームでは、一つのアカウントが100万円以上でやりとりされることもある。
このID・パスワードの売買はあくまでも闇取引で、日本の多くのゲーム運営者は利用規約でRMTを禁止している。
だが、売買を仲介する業者まで現れ、闇取引が後を絶たない。「買い取ったID・パスワードが使えない」「強くならない」などの詐欺もまかり通っているそうだ。(つづく)
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